国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ
被災地におけるレプトスピラ症について

2011年3月29日現在
国立感染症研究所 細菌第一部・感染症情報センター

 レプトスピラ症は、ネズミなどの保有動物の尿中に排出された病原性レプトスピラに汚染された環境(水や土壌)との接触によっておこります(経皮・粘膜感染)。またネズミ尿に汚染された飲食物を摂食することで感染することもあります。

 レプトスピラは海水中で長期間生存することはありませんが、今後、震災により発生した、あるいは避難所から発生するゴミの回収困難などによる衛生環境の悪化によりネズミ等が増加することも考えられ、感染機会の増加が懸念されます。また震災により普段は使用していなかった井戸水を使ったことによる感染も報告されています1)

 レプトスピラ症は、インフルエンザ様の軽症型が多いとされていますが、黄疸や腎不全を伴う重症型もおこります。治療にはペニシリンGやドキシサイクリンなどの抗菌薬が用いられますが、ペニシリンを用いた場合はJarisch‐Herxheimer 反応(抗菌薬投与後に起こる、破壊された菌体成分によるとみられる発熱、低血圧を主症状とするショック)がみられることがあるので、静注投与を受けた患者の観察が必要です。レプトスピラ症は、特に軽症型の場合は臨床症状から診断するのは難しく、特別な実験室診断が必要になります2)

 感染予防には、汚染された環境との接触を減らすことが重要です。作業等により環境水や土壌と接触する機会がある場合には、必ず手袋やゴム長靴を着用するようにしましょう。またネズミの増殖を防ぐためにも、避難所や被災地のゴミの回収、適切な処理も必要となってくるでしょう。


■レプトスピラ症の詳細については、以下を参照下さい■
感染症週報(IDWR)2003年第1-2週合併号掲載、感染症の話
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_012/k03_012.html
病原微生物検出情報(IASR)2008年1月号、レプトスピラ症 2003.11〜2007.11
http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/335/inx335-j.html

■参考文献■
 1)Aoki T, Koizumi N, Watanabe H. A case of leptospirosis probably caused by drinking contaminated well-water after an earthquake. Jpn J Infect Dis. 2001;54(6):243-244.

 2)細菌第一部ホームページ http://www.nih.go.jp/niid/bac1/4th-leptospira_test.html

(2011年3月29日 IDSC 更新)

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