京都市における1996/97シーズンのインフルエンザウイルスB型変異株検出状況

1996年12月に始まった京都市のインフルエンザ流行は、に示すように12月下旬〜1月上旬にかけてピークとなり、12月にはAH3型、1月に入ってAH3型とB型が検出されたが、いずれもワクチンタイプであった。流行は2月に入って下降し始め、ウイルスも検出されなくなったが、で明らかなように、その後の患者数の減少は鈍く、流行がいつまでも尾を引いている感を呈していた。

4月下旬の第18週に、京都市北区の1定点病院から、インフルエンザ様疾患と思われる患者がしばしば来院することについてコメントを求められ、直ちに咽頭ぬぐい液を採取していただいた。検体をMDCK細胞に接種したところ、1検体で初代から明瞭なCPEが出現した。0.5%ニワトリ赤血球を用いHAおよびHIを行ったところ、HA価は1:128、HI価はワクチン株のAH1、AH3、Bのいずれに対しても<1:32となり、ワクチン株と異なる株と推定された。兵庫県立衛生研究所山岡政興博士にご意見を伺ったところ、おそらくB型変異株であろうとのことで、同研究所で過去に検出されたB型変異株(B/兵庫/4/91)に対するマウス抗血清の分与を受けた。この抗血清でHIを行ったところ、ホモHI価1:1,024 に対し分離株も1:1,024を示し、B型と同定した。

その後、5月以降もインフルエンザ様疾患患者検体がサーベイランスで採取され、検査を行った結果、5月下旬〜6月にかけてさらに4株のインフルエンザウイルスが検出された。に示すように、いずれもワクチン株抗血清に対してはすべて<1:32であり、B/兵庫/4/91抗血清に対して1:1,024のHI価を示し、前述の株と同タイプのB型変異株と思われた。

患者検体は京都市北区の同一定点病院から寄せられたもので、患者はに示すとおり、1例を除き38〜39℃の発熱と上気道炎を主症状としたインフルエンザ様疾患と診断されていた。したがって、1996/97シーズン後半に、B型変異株に由来する流行が京都市で起こり、それがに示したような、シーズン後半の低い山を形成した主要因であったと思われる。このように、インフルエンザ流行が夏かぜと重複する時期まで続いているのは、本市サーベイランス開始以来初めてのことであり、定点病院でもインフルエンザの流行様相の様変わりに驚いていた。

このようなB型変異株の流行はすでに大阪府から報告されており( 本月報Vol.18、No.5、p.4-5)、変異株はBビクトリアタイプとされている。このタイプの流行は、関西だけでなく全国的規模で起こっている現象であろう。

6月上旬以降も定点からインフルエンザ様疾患患者検体が寄せられている。B型変異株が次シーズンのインフルエンザ流行に及ぼす影響を考慮に入れ、我々は今夏以降も引き続き感染症サーベイランスでインフルエンザウイルスをフォローする体制を整えている。

京都市衛生公害研究所微生物部門
唐牛良明 梅垣康弘 宇野典子

今月の表紙へ戻る


Return to the IASR HomePage
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る