小学校で発生したカンピロバクターによる集団食中毒事例−奈良県

1997年6月に橿原市内の小学校においてCampylobacter jejuni(C.jejuni)による大規模な集団食中毒が発生した。

6月2日にK小学校児童数名が橿原市内の2医療機関で食中毒症状を呈し診察を受け、2医療機関では発生時間が類似していることから、食中毒の疑いとして橿原市健康増進課に報告した。

保健所の調査では小学校児童 785名中 578名、職員43名中24名が5月30日を初発として6月12日までに、下痢、腹痛、発熱等の食中毒症状を呈し、うち7名が入院した。患者発生状況は5月30日1名、31日55名、6月1日 246名、2日が 189名で、以後患者発生は急減した。学年、男女別患者発生率に大差は無かった。患者の主症状は下痢(85%)、発熱(81%)、腹痛(74%)、頭痛(50%)であり、他に嘔気、嘔吐、倦怠感、悪寒などがみられた。

細菌検査は検便 462検体(児童・職員457名)、検食25検体(26日〜30日の給食)、保存原材料10検体、調理器具等のふきとり18検体について検査を実施した。検便462検体中307名からC.jejuniが分離され、同菌による食中毒と断定した。検食、原材料、ふきとりからC.jejuniは検出されなかった。カンピロバクター・レファレンスセンター(大阪府立公衆衛生研究所)に分離菌株の血清型別を依頼したところ、それらはLIO7型であった。

患者発生状況、喫食状況を検討したところ、26日〜30日の間で30日の給食だけ摂取した児童が発症していること、30日に欠席した児童には菌陽性者がいないこと、またχ2検定の結果、30日の給食が有意の値を示した。以上から30日の給食を原因食と断定した。30日の献立はパン、冷麺、フルーツ白玉、棒状ソーセージ、牛乳、ミルメークであった。献立別では冷麺が特に高い値を示したが、特定の原因食品を究明することはできなかった。

奈良県衛生研究所
吉田 哲 岩本サカエ 塩田裕徳
森田陽子 米澤 靖  青木喜也
桜井保健所 島本 剛 中尾清勝

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