生後13日で死亡した新生児肝臓からの単純ヘルペスウイルス2型の分離−千葉県

敗血症、播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断され、生後13日目に死亡した患児の剖検時の肝片より単純ヘルペスウイルス2型(HSV2)を分離したので報告する。

患児は女児で、在胎40週成熟児で出生したが、生後5日目に発熱し、抗生剤の治療で改善せず、生後8日目にK病院に転院した。入院時、活動性低下、WBC 7,000/μl、Hb 13.49/dl、PLT 4.3×104/μl、 CRP 4,019ng/mlで、敗血症と診断され、同時にヘルペス感染症を考慮し抗生物質に加えアシクロビルの投与も行っている。アシクロビルの投与は死亡時まで続けられた。入院時(8日目)に尿と咽頭ぬぐい液のウイルス分離を行い、陰性の結果を得ている。さらに血液所見よりDICの合併と診断され治療された。生後10日目チアノーゼの持続のため、気管挿管、人工呼吸管理とした。しかし、その後は腹部膨満、血圧低下をきたし、ショック状態となる。吐血、血便のため、交換輸血と腎透析が行われた。ショック状態は一時的に改善されたが、その後消化管出血の持続により輸血を繰り返すも、13日目に死亡した。

ウイルス分離のために用いた細胞はHeLa、Vero、CaCo-2で、24wellのMicroplateを用いて培養した。また、同定は接種細胞のFA(蛍光抗体法)によって行った。HeLa細胞は2代目で弱いCPEが現れ、3代目継代、翌日に大小不同の円形巨細胞を伴う強いCPEが現れた。CaCo-2細胞に接種のものは、20日目に弱いCPEが出現するも、以後培養したが全面に広がることはなかった。Vero細胞は3代継代したがCPEは出現しなかった。

新生児ヘルペス感染症として、これまでに報告された症例からは必ず肝臓からウイルスが分離されている。今回の我々の例では肝臓片からのウイルス分離以外には新生児ヘルペスを疑う客観的根拠はない。しかし臨床症状を比較してみると、報告例とよく一致していたことから、おそらく新生児ヘルペス感染症と考えて良いものと思われた。

千葉県衛生研究所
山中隆也 篠崎邦子 小川知子
時枝正吉 水口康雄
千葉市立海浜病院 尾崎由佳

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