治療を要する肺炎入院患者に対する肺炎球菌およびインフルエンザワクチン接種機会の喪失、1995年−米国西部12州
アメリカでは侵襲性の肺炎球菌感染症とインフルエンザが65歳以上の受診者の間での罹患と死亡の重大な原因となっている。65歳以上の肺炎球菌による菌血症の発病件数は年間10万人当たり50〜83例であり、致命率も高い。また、インフルエンザによる死亡の90%以上が高齢者であり、その入院による治療費は年間10億ドルに達する。
アメリカ西部12州において1994年10月〜1995年9月の間に入院し治療を受けた肺炎患者に対するワクチン接種適用の評価が行われた。調査は87,230人の入院例の中から無作為に選ばれた4,548人を対象に行われた。1991〜1995年の間の肺炎球菌ワクチンの接種率は20%で、うち入院前の接種が12%、退院後が6.9%、入院中が0.4%であった。一方、1994年10月〜12月の間に入院した1,242人の患者中、1994年9月〜12月の間にインフルエンザワクチン接種を行っていた患者は35%、うち29%は入院前、5.3%は退院後、0.7%は入院中であった。このようにどちらのワクチンの接種率も低い値となった。
ACIPはワクチン接種を広めるために、65歳以上の人は少なくとも1回の肺炎球菌ワクチンの接種と年に1回のインフルエンザワクチンの接種をすべきであり、その接種の機会としては入院時を利用すべきであると推奨していた。また、アメリカ病院協会感染症専門委員団は、臨床スタッフがすべての患者のワクチン歴を把握することや退院時や長期入院時のワクチン接種実施を病院に働きかけていた。しかし今回の調査によれば、少なくともアメリカ西部においては、病院の医療記録にワクチン歴が記載されているのは稀で、入院患者に対しては一貫したワクチン接種が行われていないことが判明した。また、退院後のワクチン接種も稀であった。特筆すべきことは、高齢者のワクチン接種の機会が肺炎球菌ワクチンでは80%近く、インフルエンザワクチンでは65%近くも逃されていることである。
(CDC、MMWR、46、No.39、919、1997)