呼吸器疾患散発例からのアデノウイルス7型の分離−山梨県

1995年5〜6月に山梨県内の高等学校の寄宿寮内でアデノウイルス7型(Ad7)の集団発生があり、その概要および集団発生後に行った血清抗体調査については本月報Vol.17、No.5およびVol.18、No.4で報告した。その後、山梨県内では散発例を含めAd7は分離されていなかったが、昨年のインフルエンザの流行が起こる直前の1997年12月に、夏から流行がみられたアデノウイルス3型(Ad3)に混ざって上気道炎の散発例3例(10、11、17歳)からAd7が分離されたので、今回その概要を報告する。

検体はいずれも同じ内科・小児科医院で採取された咽頭ぬぐい液で、これをHEp-2、RD-18S、MDCKの各細胞に接種して継代培養を行った。その結果、HEp-2細胞でウイルスが分離され、国立感染症研究所分与の抗血清を用いた中和反応でAd7と同定された。また、国立感染症研究所によるPCR法およびDNA制限酵素切断法での同定の結果もAd7であった。

臨床症状では39℃以上の発熱、咽頭発赤、咽頭痛、頭痛が3例ともにみられ、発熱は4、5日間持続した。このうち1名は最高体温が40℃に達し、入院治療を要した。その他の症状では嘔吐、腹痛が2例に、下痢、筋関節痛、咳が1例にみられたがアデノウイルス特有の眼症状はみられなかった。2例について急性期血清の生化学検査をおこなった結果、CRPが高値(2.6mg/dl、2.9mg/dl)である以外に特徴的な所見は認められなかった。

Ad7が検出された1997年12月にはAd3も4症例から分離されており、Ad7が分離された症例と臨床症状を比較してみたところ、Ad3が分離された症例でも全例に39℃以上の発熱が認められた。このうち2例は最高体温が40℃であった。その他の症状においても、Ad7とAd3との分離症例間で目立った相違は認められなかった。

インフルエンザ、アデノウイルス3、7型感染の鑑別には病原診断が重要であると実感した。

山梨県衛生公害研究所 山上隆也 小澤 茂
井上内科・小児科医院 井上利男 横山 宏
山梨県立中央病院小児科
田中 均 荻原 篤 佐藤俊彦 栗屋敬之
小松小児科医院   小松史俊
国立感染症研究所  向山淳司

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