類鼻疽サーベイランス、1997年−シンガポール

類鼻疽はBurkholderia pseudomallei(グラム陰性桿菌)によって引き起こされる人畜共通感染症である。感染は皮膚の切り傷、擦り傷に類鼻疽桿菌で汚染された土、水が直接触れることによって起きる。潜伏期は2日〜数カ月あるいは数年に及ぶことがある。

シンガポールでは1997年に合計58人の患者報告があり、そのうち9人が死亡した。発生率は人口10万に対して1.9で死亡率は16%であった。感染年齢は9〜82歳で最も発生率の高い年齢は55歳以上であった。男女比は7.3:1である。主な人種グループでの発生率はインド人(人口10万対3.5)が最も高く、次にマレー人(同3.2)、中国人(同1.3)である。患者発生の時期は年間を通して散発的にみられるが、最も多いのが2〜6月である。患者の大多数は掃除夫、労働者、マーケットなどの店員であった。

主な臨床症状は発熱(81%)、咳(43%)、消化不良(24%)、肋膜痛(19%)である。報告された患者のほとんどは、他の病気をもっており最も多いのが糖尿病(48%)である。その他は高血圧、虚血性心疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺結核、腎不全および脳血管性疾患であった。死亡率は合併症を有する場合に特異的に高くなる。

実験室診断は臨床診断された患者の臨床検体からの培養によるB.pseudomalleiの確認、または間接血球凝集反応による≧1:16の抗体価の確認により行った。臨床検体から検出されたB.pseudomalleiのすべてはセフタジジム、セフォペラゾン、セファゾリン、アモキシシリン/クラブラン酸、アンピシリン/スルバクタム、ドキシサイクリンに感受性であった。大多数はピペラシリン(98%)、テトラサイクリン(97%)、クロラムフェニコール(91%)とイミペネム(88%)に感受性であった。1/4はコトリモキサゾールに対して感受性である。また、アンピシリン、アモキシシリン、ゲンタマイシンとネチルマイシン、セファロチン、セファクロル、セファレキシンとセフォキシチンに耐性であった。

環境におけるB.pseudomalleiのサーベイランスでは、患者報告のあったシンガポール国内各地から集められた土壌40検体からはB.pseudomalleiは検出されなかった。

(Singapore ENB、24、No.4、19、1998)

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