Burkholderia cepaciaの農産物への応用とヒトに対する影響について

Burkholderia cepacia(旧称Pseudomonas cepacia)は土壌や湿ったところに住む環境細菌で、非常に厳しい環境にも適応し、もともと抗菌薬多剤に対して耐性である。1949年にBurkholderによってタマネギ腐敗の原因として発見されたこの菌は、医療の現場ではPseudomonas cepaciaとしてこの20年間にさまざまな感染症の原因として注目されるようになった。B.cepaciaはCystic fibrosis(嚢ほう性線維症)患者に感染すると、予後を著しく増悪させ、これらの患者を死にいたらしめる(cepasia syndrome)。最近では院内感染の原因菌として、カテーテルを介した敗血症などを惹起し問題となっている。

一方、農業生産者の間ではB.cepaciaは植物成長促進菌として評価されるようになっている。本菌は代謝能力に優れ、枯草剤や殺虫剤の成分であり発癌物質でもある塩化芳香族化合物さえも分解してエネルギー源にしてしまう。そのうえこの菌には土壌由来のカビ類の生育によって生じる植物の白症(bright)を阻止し、経済的に重要な作物を病害から守る働きがある。また、キュウリなどの野菜類、豆類をはじめとする多くの商用植物をさまざまなカビから守る。B.cepaciaを使えば、自然に分解されることのない有毒な抗真菌剤を使うよりも環境に優しい。林業でも針葉樹がカビによって受ける経済的損失は大きく、B.cepaciaはそれすらも解決してくれる。B.cepaciaの農業応用が各種パテント申請されており、この応用による経済的、環境的利益は膨大であると考えられる。

B.cepaciaが農産物に多用されるようになるとヒトがこの菌に暴露される機会も増える。高度に伝染力を持つ株が問題となるが、非常に大きく複雑で可変性に富むゲノムを持つ本菌からはこのような株がいつ発生するか予測がつかない。農産物への本菌の応用を可能にするためには、このような株の遺伝子学的制御が可能になるか、乾燥に弱い本菌の性質を利用するかなど適切な管理が行われなければならない。

(CDC、EID、4、No.2、 221、1998)

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