<速報> エコーウイルス30型による無菌性髄膜炎の流行−福井県
福井市を中心とする嶺北地域で1998年5月初旬から無菌性髄膜炎が多発し始め、拡大傾向にある。例年に比べ1〜2カ月早い発生である。
6月中旬までに検査定点を含む医療機関から搬入された患者髄液数は47名、47検体(5月12名、6月35名)で、全体の85%は7歳以下の患者である。
検査の結果、31名(分離率66%)の髄液からエコーウイルス30型(E30)を分離し、それ以外の病原ウイルスは今のところ検出されていない。ウイルス分離にはHEp-2、RD-18SおよびVero細胞を使用している。E30はHEp-2およびRD-18S細胞に高い感受性を示したが、細胞変性効果はHEp-2細胞が若干早く出現した(1日程度)。分離株の同定は東海・北陸レファレンスセンター(愛知衛研)分与のEP95抗血清とE30自家製抗血清(1983年および1991年福井分離株)を用いることで、容易に同定できた。
本県ではE30による無菌性髄膜炎が昨年から多発している。特に、福井市の東部地域ではエンテロウイルスの流行閑期といわれる10月〜今年の1月にかけて集中的に発生(分離結果35/43名)し、その後散発が3月まで続いた。
今回の流行は発生時期が例年より早いことから、当該地域に越冬したウイルスが福井市周辺の感受性者の蓄積する地域で再び流行し始めたものと推測している。なお、昨年の夏期に流行した嶺南地域では今のところ患者発生の報告はない。
前回の流行(1990〜1991年)同様、本県におけるE30流行の特徴は限局地域での集中発生を繰り返しながら、侵淫規模を拡大していく様相を呈している。また、兄弟と親の家族内感染が数件見られ、ウイルス伝播のあり方などに注目している。
福井県衛生研究所 東方美保 松本和男