The Topic of This Month Vol.19 No.9(No.223)
STD患者報告総数はサーベイランスが開始された1987年には44,470であった。その後増減があるものの1992年までは4万人台が維持されていたが、淋病様疾患の急激な減少により、1993年にはおよそ33,000となった。減少傾向はその後1995年まで続いたが、1996〜97年は再び増加傾向にある(表1)。本特集では主要3疾患の1993年以降の動向について述べる。
淋病様疾患:患者数はサーベイランス開始以降1991年にピークに達したが、その後急激に減少し1994年にはピーク時の40%にまで低下した。これはエイズ患者発生にともなうキャンペーンの影響とされている。しかし、1995年からふたたび増加に転じ、1996〜97年は引き続き増加傾向にある(図1)。そのため、全STD患者数に占める割合も1994年の19%から1997年には25%になった(表1)。1993年以降の患者発生動向を性別・年齢別にみると(図2a)、男性の25〜34歳では1994年も微増している。1996〜97年は60歳以上を除く年齢層で増加しており、特に20〜34歳で著しい。女性では1996〜97年に20〜24歳でやや増加がみられる。淋菌の主要薬剤に対する感受性の動向は本号4ページを参照。
性器クラミジア感染症:患者数はサーベイランス開始以降漸次増加傾向にあるものの、1992〜95年は増加がやや鈍っていた。しかし、1996〜97年は再度増加傾向を示している(図1)。また、1996〜97年は淋病様疾患増加のために対淋病様疾患比は小さくなっているが、全STD患者数に占める割合は1997年に45%を超えた(表1)。1993年以降の患者発生動向を性別・年齢別にみると(図2b)、男性の24歳以下では漸次増加傾向にある。1997年は40〜44歳を除き全年齢層で増加しているが、20〜24歳、30〜34歳で著明である。また、患者年齢のピークは1996年までは25〜29歳であったが、1997年には20〜24歳に移行している。女性では39歳以下で1995年にわずかに減少しているものの、1996年から再び増加傾向にある。患者年齢のピークは20〜24歳で、この年齢層以下では男性患者発生数を上回っている(本月報Vol.11、No.9、1990; Vol.14、No.8、1993;Vol.17、No.10、1996参照)。
病原微生物検出情報へは1993〜1997年に地方衛生研究所(地研)より陰部と尿からのChlamydia trachomatis検出例が1,151報告された。一部の地研では分離C.trachomatisの血清型別が行われているが、年次による血清型の推移が考えられている(本号6ページ参照)。
性器ヘルペス:患者数は1989〜96年の間微増傾向にあるが、1997年はやや減少している(図1)。全STD患者数に占める割合も1996年には18%であったが、1997年は17%に減少した(表1)。1993年以降の患者発生動向を性別・年齢別にみると(図2c)、男性では35〜39歳、55歳以上を除いて減少傾向にある。しかし、女性では全年齢層にわたって横ばいあるいは増加傾向にある。また、29歳以下では女性患者発生数は男性に比べて多い。
1993〜97年に地研および一部民間検査機関より性器からの単純ヘルペスウイルス(HSV)検出例が282報告された。年齢不詳10を除く272について性別・年齢別に検出されたHSVの型をみた(図3)。報告のおよそ8割は女性であり、患者情報の性比とは異なる。感染HSVは男性では2型は1型の約2倍、女性は1型と2型がほぼ同数であった。また、60歳以上では男女とも2型が主であることから、この年齢層の発症は再発によるものと思われる。
速報:感染症サーベイランス情報によると、1996年1〜6月のSTD患者数を100とすると、1997年同期は106、1998年同期は109となり、明らかに増加している。とくに淋病様疾患および性器クラミジア感染症はそれぞれ18%増となっている。しかし、性器ヘルペスは1997年以降男女ともやや減少している。