愛媛県におけるアストロウイルス検出状況

アストロウイルスは、小児の急性胃腸炎の原因の一つであるが、ロタウイルスや、小型球形ウイルス(SRSV)に比べ検出率は低い。しかし、時に大規模な食中毒様の集団発生を引き起こすため、公衆衛生上重要なウイルスと考えられている。

我々が継続的に実施している、主に電子顕微鏡法(EM法)を用いた小児急性胃腸炎の病原検索において、アストロウイルスは毎年1〜2%の患者から検出されている。今年も、2月〜5月の間に、アストロウイルスが10例検出された。以下にアストロウイルスの最近の検出状況について報告する。

1997年1月〜1999年5月の間に採取した小児急性胃腸炎患者糞便988例からEM法により、170例(17%)のウイルス粒子が検出された。その内訳は表1に示したとおりで、ロタウイルスが94例、SRSVが40例(PCR陽性例を加えると74例)、アストロウイルスが22例検出され、ロタウイルス、SRSVに次いで多かった。アストロウイルスの年次別の検出数は、1997年が10例、1998年が2例で、1999年は5月現在で10例と、例年より多かった。検出した患者の年齢は、86%が5歳以下であった。

表2に最近1年間のこれらのウイルスの月別検出状況を示した。アストロウイルスは、1999年3月(42検体中6例検出、14%)をピークとして、2月〜5月の間に多く検出された。この時期の小児急性胃腸炎の主病因の一つであったと考えられる。

次に、今回検出されたアストロウイルスについて、我々が開発した、捕獲抗体および検出抗体に同一抗血清を用いた1抗体サンドイッチELISA法1)により血清型別を行った。その結果、1997年は1型が6例、5型が1例、4型と5型の混合感染が1例、1998年は1型と5型がそれぞれ1例、1999年は型別検査を行った7例中1型が4例であった。型別不能が3例あったが、これらについては、CaCo-2細胞を用いてアストロウイルスを分離し、その培養上清を用いた型別検査を行いたい。

血清型別では、1型がもっとも多く、年次により頻度は異なるが毎年検出された。これは、我々の1981〜1996年の成績および英国2,3)での報告と一致していた。

アストロウイルスが検出された患者の臨床症状は、発熱が81%にみられ、そのうちの82%は38℃以上で高熱を伴うものが多い傾向がみられた。また、下痢が92%、腹痛が52%、嘔吐が48%で、上気道症状を伴う例もみられた。その他、38%の患者からは、便中に膿球が検出された。アストロウイルス陽性者22例中3例に病原細菌との重複感染(病原性大腸菌O18検出例が2例、カンピロバクターと病原大腸菌O26の検出例が1例)がみられたが、これら3例の症状が他に比べ重い傾向はみられなかった。また、血清型1型に特有の症状は認められなかった。1999年3月にアストロウイルスが比較的集中して流行した要因は不明である。

 参考文献
1)大瀬戸光明他、愛媛衛研年報 58:14-18, 1996
2)Lee, T. W., et al., Epidemiol. Infect. 112:187-193, 1994
3)Noel, J. S., et al., Epidemiol. Infect. 113:153-159, 1994

愛媛県立衛生環境研究所
山下育孝 大瀬戸光明 吉田紀美 近藤玲子 浅井忠雄 井上博雄
石丸小児科医院 中野省三 石丸啓郎

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