水痘に関連した死亡例、1998年−米国・フロリダ州
1998年にフロリダ州保健部はCDCに6例の水痘による死亡例を報告した。2例は小児で、4例は成人であり、いずれも予防接種を受けていなかった。本稿では水痘による死亡例をまとめ、予防方法を推奨する。
症例1:健康な予防接種未接種の6歳男児、水痘のクラスメートと接触のあったのち2月19日に水痘疹、腹痛、倦怠感、食欲不振を発症した。喘息により間欠的にステロイドの吸入を受けていたが、全身投与は受けていない。2月22日、出血性の水痘疹、頻拍、多呼吸、血小板減少(89,000)にて入院したが、数時間後肺水腫、呼吸不全をおこし、23日に死亡した。多臓器からのサンプルはVZV-PCR陽性であった。
症例2:健康な予防接種未接種の58歳女性、水痘との接触歴はない。3月27日水痘疹出現し、4月3日水痘肺炎で入院した。アシクロビル(ACV)とセフトリアキソン(CTRX)によって治療されたが、ARDS、DIC、腎不全および昏睡となり4月20日死亡した。
症例3:健康な予防接種未接種の29歳男性、4月上旬、自分の子どもが水痘に罹患したのち、4月27日水痘疹出現した。29日胸痛と呼吸困難で受診、胸部レ線で両側性の間質浸潤影がみられた。30日に喀血をきたし、呼吸困難増強のためACVと抗生剤による治療が行われたが、敗血症、ARDS、MOFを併発して5月12日死亡した。
症例4:予防接種未接種の21歳女性、子ども療育センターの職員、水痘患児との接触後、5月5日に水痘疹出現した。喘息により毎日5mgのプレドニゾロンを内服していた。5月7日に水痘肺炎で入院し、ACVによる治療を受けたが、8日死亡した。
症例5:予防接種未接種の8歳男児、ALLのために5月15日骨髄移植を受け、免疫抑制療法中であったが、7月11日水痘疹出現し、23日蛍光抗体法で水痘と確定された。過去水痘の既往はなく、接触歴もなかった。7月16日抗水痘ガンマグロブリンで治療され、23日ACV治療を受けた。25日、ALLの再発、GVHD、播種性水痘により死亡した。
症例6:予防接種未接種、糖尿病、喘息、肝硬変のある45歳の男性、10月3日水痘疹が出現した。水痘の既往および水痘との接触歴はない。ステロイドおよび免疫抑制剤を投与されたこともない。10月5日入院し、6日ACVによる治療が開始されたが、8日に死亡した。剖検によりすべての重要臓器からVZVが確認された。
水痘は水痘ワクチンにより予防できる疾患である。米国では12カ月齢以上のすべての感受性のある人に対して推奨されており、ACIPは療育施設や学校入学に際しては水痘ワクチンの接種を要求するよう勧告している。またハイリスクの成人や子どもと一緒に住む成人への勧奨を強化しているが、すべての感受性のある思春期、成人に対して予防接種を行うよう勧奨している。
(CDC、MMWR、48、No.18、379、1999)