麻疹対策、1990〜97年−WHO 南東アジア地域

1989年、WHO総会は麻疹の罹患率と死亡率を1995年までに、ワクチン導入以前のそれぞれ90%と95%減少させることを決定した。1990年世界こどもサミットは2000年までに麻疹のワクチン接種率を90%に上げることを採択した。まだ達成には至っていないが、着実に麻疹撲滅に向かって進みつつある。1997年末には全世界での推計麻疹罹患率と死亡率はそれぞれ74%と85%減少し、南東アジア地域(SEAR)でもそれぞれ70%、88%減少している。

定期予防接種:タイと朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を除くSEAR諸国では定期の予防接種として9カ月齢時の1回接種がおこなわれている。タイでは入学時の追加接種が勧奨されている。北朝鮮では1回目12カ月、2回目7歳、3回目17歳の3回接種が行われている。SEAR全体では1歳以下での1回接種の接種率は1985年には10%以下であったのが、1990年には80%を超えた。1990年以降は約85%で安定している。1997年では10加盟国のうち9で定期接種率が80%を超えている。

補足予防接種:全国的な補足的ワクチンキャンペーンはブータン(1995)、モルディブ(1995〜1997)で行われ、地域的なキャンペーンはバングラデシュの洪水被害地区(1998)、北朝鮮国境付近(1995)、インド人口集中地区(1995〜1999)、ミャンマー(1995と1997)、およびネパール国内の3カ所の高危険地区で行われたが、これらの効果については限られた情報しか得られなかった。

麻疹罹患率:1990〜1997年におけるSEARでの報告麻疹患者数と罹患率はそれぞれ48%、53%減少した。インドネシア、ミャンマー、スリランカでは実質上罹患率は減少したが、バングラデシュではサーベイランスの強化に伴い445%増加し、ネパールではサーベイランスの強化と集団発生の多発により5,070%増加した。北朝鮮とモルディブは麻疹患者の報告はなかった。患者の年齢分布は、ミャンマーでは70%の患者が5歳以下であったが、より高い予防接種率の国(ブータン、インドネシア、モルディブ、スリランカ、タイ)では50%以上の患者が5歳以上で発生していた。

行動計画:SEARでの主目標は2003年までに麻疹罹患率と死亡をワクチン導入以前のそれぞれ90%、95%減少させることである。加盟国を麻疹対策のレベルとポリオ根絶の状況に応じて2つのグループに分け、行動計画を策定している。グループ1(バングラデシュ、北朝鮮、インド、ミャンマー、ネパール)は限られた麻疹対策が行われており、ポリオ流行が現在、あるいは近年まであった国で、ワクチンの定期接種率を90%以上に上昇させ、患者に対する対応を改善し、補足的予防接種を行うことによって麻疹死亡率を減少させることに主眼をおく。グループ2(ブータン、インドネシア、モルディブ、スリランカ、タイ)は麻疹対策が進んでおり、かつ2年以上ポリオの発生のない国であるが、これらの国では、サーベイランスを強化し、高い定期接種率を維持し、対象を絞った補足的予防接種により麻疹の集団発生を防止することが強調されている。
(CDC、MMWR、48、No.25、541、1999)

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