今シーズン(1999/2000)に分離されたB型インフルエンザウイルス−広島県

今シーズンのインフルエンザB型ウイルスは、国立感染症研究所・呼吸器系ウイルス室提供のインフルエンザ流行情報によると、福岡市で1999年12月13日に10歳の小児から分離された1事例が報告されているにすぎない(上記参照)。今回、広島県内においても1999年12月8日にインフルエンザ様患者から採取した咽頭ぬぐい液からB型ウイルスが1株分離されたので報告する。

患者は広島県内の高田郡高宮町に在住の1歳男児。症状は38℃の発熱、上気道炎、嘔吐、下痢であった。患者の咽頭ぬぐい液について、「RT-PCR法によるインフルエンザウイルス遺伝子の検出」と「MDCK細胞を用いてのウイルス分離」を試みた。その結果、B型インフルエンザウイルスのNS geneに特異的なプライマー・ペアを用いた場合に遺伝子断片の増幅が認められ、MDCK細胞で、モルモット赤血球とニワトリ赤血球に対して凝集性のあるウイルスが分離された。分離ウイルスを抗原として、国立感染症研究所・呼吸器系ウイルス室から分与された1999/2000シーズン用のインフルエンザ抗血清キットを用いてHI試験を行ったところ、Aソ連(H1)型ウイルス、A香港(H3)型ウイルスおよび2種類のB型ウイルスの、いずれの抗血清も<1:10のHI価であった。そこで、1997/1998シーズンおよび1998/1999シーズン用の抗血清を用いてHI試験を実施したところ、抗B/Mie/1/93血清は1:10、 抗B/Harbin/07/94血清は1:40のHI価を示した()。

わが国においては、ここ数年、B/Yamagata/18/88系統のウイルスとB/Victoria/2/87系統のウイルスが流行しており、前者はB/Harbin/07/94ウイルスを経て、B/Yamanashi/166/98ウイルスに至っていると説明されている(本月報Vol.20、No.12、1999)。今回我々が分離したウイルスは、B/Harbin/07/94ウイルスの系統ではあるが、B/Yamanashi/166/98ウイルスとは抗原性の異なるB型ウイルスであると考えられる。

なお、広島県におけるB型ウイルスの分離例はこの1例のみで、当該患者と同じ時期に同じ地域で採取された、他のインフルエンザ様患者からもB型ウイルスは分離されていない。

広島県保健環境センター
高尾信一 島津幸枝 福田伸治 野田雅博 徳本静代
厚生連吉田総合病院 藤田篤史 駒沢 徹

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