Plesiomonas shigelloides による食中毒事例−浜松市
(Vol.21 p 244-244)

2000(平成12)年6月5日、浜松市内のA病院より、下痢、腹痛等の食中毒症状を呈している者が数名いる旨の連絡があった。調査の結果、患者は6月4日静岡県袋井市内のB飲食店で喫食しており、同じ日に同店で喫食した客 670名中、8グループ36名(発症率 5.4%)の患者発生がみられた。主な症状は下痢が36人全員で、水様便が1日1〜8回(平均 4.6回)あり、腹痛も14人(39%)あった。なお、嘔吐は2名(6%)で、発熱のあった者は無く、比較的軽い症状であった。

原因食品は疫学調査の結果、6月4日昼食の釜飯と推定され、潜伏時間は8時間〜43時間(平均17時間30分)であった。

患者便17検体を当研究所で検査した結果、9検体よりPlesiomonas shigelloides が検出され、その他の下痢起因性食中毒菌は検出されなかった。また、本食中毒との関連は不明であるが、17名の患者便すべてからCitrobacter freundii が検出され、患者の共通食品に由来すると推測された。

食品14検体、ふきとり13検体、調理従事者便3検体については静岡県中東遠保健所で検査を行ったがP. shigelloides は検出されなかった。

9株のP. shigelloides は、DHL寒天培地による直接培養では検出されず、すべてアルカリペプトン水による増菌培養後に分離された。生化学的性状試験の結果は、TSI:−/+−−、LIM:+++、オキシダーゼ:+、VP:−、アルギニン:+、オルニチン:+、シモンズクエン酸:−、グルコース:酸+ガス−となり、簡易同定キット(バイオテスト1号)の結果は、9株すべて相対確率100%でP. shigelloides と判定された。薬剤感受性試験の結果は、9株すべてSM耐性で、 ABPC、 KM、 GM、 TC、 CP、 TMP、 NA、 FOM、 CPFX、 ST、 CTM感受性で一致した。

食品、ふきとり、調理従事者便からP.shigelloides は検出されなかったが、通常本菌が健康者便から分離されることはきわめてまれであることから、これが原因菌と断定した。

P. shigelloides は河川水や、海外渡航後の下痢症患者便からしばしば検出されるが、1982(昭和57)年3月に新たな食中毒菌に指定されて以来、本菌による集団食中毒は浜松市を含めて、静岡県下で初めてである。また、「食中毒予防必携」(社団法人 日本食品衛生協会 1998年)によると、これまでにP. shigelloides の集団発生は国内で11例が報告されているのみである。

浜松市保健環境研究所
小粥敏弘 風間広弥 土屋祐司 小泉偉左夫 飯尾友幸 門名嘉則
浜松市保健所食品衛生課
静岡県中東遠保健所

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