ハリネズミを介したサルモネラ症集団発生事例、2000年−ノルウェー
(Vol. 21 p 246-247)

2000年8月23日、Haukeland病院微生物部が多数のSalmonella Typhimurium分離(14症例)を報告した。症例はBergen(人口23万)市街のある地域と、2つの隣接する市Askøy (Bergenの北、人口2万)とOs(同南、人口1万4千)の住人であった。どの患者も最近の海外渡航歴はなく、年齢分布は均等で(子供6人を含む)、性差は認められなかった。全例が報告日である23日以前の4週間以内に発症しており、うち7例は10日以内であった。主要な症状は2〜3日続く下痢で、1例はハリネズミと遊んだ際に手にけがをし、後に菌血症を起こした。この事例以前は、サルモネラ腸炎の発生率は一定しており、この地域では人口10万人当たり40〜45症例で、うち80%近くは輸入例であった。

ケースコントロール調査の結果、ハリネズミとの直接あるいは間接的な接触が唯一の共通危険因子と確認された。9月14日までに合計30症例が確認され、うち14例は10歳以下であった。これら症例が2カ月の間に生じたものとすると、この数値は年間発生率である10万人当たり68人に匹敵する。これらのうち21例(70%)はハリネズミを飼っているか、ハリネズミが庭に来たことがあるという症例であった。8月25日の市民への注意呼びかけ後は新規患者数は減少し始めた。

パルスフィールド・ゲル電気泳動法による検討では、OsとAskøy でのヒト、ハリネズミの便、環境由来の全株は、'R'とされるプロファイルに属していた。一方、Bergenでの株はそれと明らかに異なっており、'L'と命名された。Rプロファイルは、1999年北西ノルウェーのHerøy 市で起きた50症例の水系集団発生の原因となった株と同一であった。菌はまた、それに関係した貯水槽でみつかったカモメの羽からも分離されている。Lプロファイルに属する株は、1996年に南東ノルウェーのJeløy 島での集団発生の原因菌と一致した。その集団発生では28例の菌培養陽性例が報告され、DNAプロファイルが同一の菌がヒト、土そしてハリネズミから見つかっている。

今回の集団発生で行なわれた細菌学的調査によると、それらの地域におけるハリネズミに2つの異なったサルモネラの株が定着し、それぞれ地理的に離れた地域で別々に集団発生を起こしたと考えられる。問題の地域ではハリネズミの数が増加して、これに続いてヒトへのサルモネラ伝播の機会が増加したと推測される。

(Eurosurveillance Weekly, No.38、2000)

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