The Topic of This Month Vol.22 No.5(No.255)


HIV/AIDS 2000年12月31日現在
(Vol.22 p 105-106)

エイズ発生動向調査は1984年に開始され、 1989年〜1999年3月31日までは「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)」に基づいて実施されてきた。1999年4月1日からは、 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に基づく感染症発生動向調査の一部(4類感染症・全数把握疾患)として行われている(本月報Vol.21、 No.7参照)。本特集はエイズ動向委員会によって2001年4月24日に確定された2000年エイズ発生動向年報集計に基づいてまとめた。

 1.2000年のHIV/AIDS発生状況:2000年に新たに報告されたHIV感染者(AIDS未発症者、 以下HIV)は462(男389、 女73)、 AIDS患者(以下AIDS)は327(男278、 女49)であった。国籍・性別では、 日本国籍男性がHIVの73%、 AIDSの73%と多数を占めた(図1)。感染地は、 日本国籍例の大半が国内感染(HIV 80%、 AIDS 73%)であった。感染経路は、 異性間の性的接触(HIV 37%、 AIDS 49%)および同性間の性的接触(同47%、 22%)が多く、 母子感染(同 0.6%、 0.6%)と静注薬物濫用(同 0.2%、 0.3%)は少なかった。

 2.1985年〜2000年12月31日までの累積報告数と発生動向:2000年12月31日までの累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)はHIV 3,905、 AIDS 1,913で、 人口10万対HIV 3.087、 AIDS 1.512である。HIVの年間報告数は1992年のピーク後一旦減少したが、 1996年以降再び増加傾向が続いている(図2)。2000年は1999年より68減少したが、 1年間の報告数としては過去2番目に多かった。AIDSの年間報告数は1998年を除き増加を続けており、 2000年は1999年より27増加した(図2)。

なお、 本発生動向調査とは別の全国調査によって、 凝固因子製剤によるHIV 1,432、 AIDS 642が確認されている(1998年5月末時点)。いずれも日本国籍例である。

国籍・性別:近年のHIVの増加は、 主に日本国籍男性例の増加によるもので、 日本国籍女性は過去5年間増減を繰り返している(図3a, b)。外国国籍例の報告数は過去5年間横這いないし減少傾向にある(図3c, d)。AIDSは、 日本国籍男性において増加が著しいが、 日本国籍女性、 外国国籍男女はいずれも微増もしくは横這いである。

外国国籍例を地域別にみると、 HIV、 AIDSともに東南アジアがもっとも多く、 ラテンアメリカ、 サハラ以南アフリカがそれに次ぐ。

年齢分布:過去5年間(1996〜2000年)に報告されたHIVの年齢を1991〜1995年の報告例と比較して図4に示した。日本国籍男性ではピークの25〜34歳を中心に、 幅広い年齢で増加している。日本国籍女性では20〜34歳と45歳以上で増加している。一方、 外国国籍女性では20〜24歳が大きく減少した。AIDSは、 日本国籍男性が40〜54歳と特に年齢が高いが、 他は25〜34歳にピークがある。

感染経路:HIVの74%、 AIDSの69%が性的接触による感染であった。日本国籍例のHIVでは、 男性同性間の性的接触が引き続き増加し、 過去3年間で倍増している(図3a)。外国国籍例のHIVではいずれの感染経路区分も漸減ないし横這いである(図3c, d)。日本国籍例のAIDSでは、 異性間の性的接触による報告が増加し、 同性間の性的接触も過去4年間増加傾向が認められる。外国国籍例のAIDSでは、 異性間の性的接触による報告が過去5年間増減を繰り返している。

感染地:HIVは、 日本国籍男性の国内感染例と感染地不明例が1999年まで増加を続け、 2000年にやや減少したが、 海外感染は横這いである。AIDSは、 日本国籍男女の国内感染例が大きく増加した。

AIDS報告における指標疾患:日本国籍例と外国国籍例のAIDSの累計報告数(1,407と506)を分母として各指標疾患を見ると、 両国籍群でほぼ類似しており、 ニューモシスチス・カリニ肺炎がそれぞれ46%、 42%ともっとも多く、 カンジダ症が23%、 15%、 HIV消耗性症候群が各13%を占める。両群では活動性結核に差が認められ、 日本国籍例が7.2%であるのに対し、 外国国籍例では、 13%とほぼ2倍になっている。また、 サイトメガロウイルス感染症は、 日本国籍例10%、 外国国籍例4.2%と、 日本国籍例の割合が高くなっている。

病変死亡の動向:エイズ予防法に基づいて1999年3月31日までに報告された病変死亡例は596で、 内訳は日本国籍が485(男性445、 女性40)、 外国国籍が111(男性77、 女性34)であった。1999年4月に施行された感染症法では病変報告(HIV→AIDS、 生存→死亡)の義務はなく、 1999年4月1日〜2000年12月31日までに医師から任意に報告された病変死亡例は83、 このうち日本国籍例が67(男性62、 女性5)、 外国国籍例が16(男性11、 女性5)であった。近年、 日本国籍男女で病変死亡例報告数の減少がみられる。

 3.献血者のHIV抗体陽性率:献血者のHIV抗体陽性率は年々増加を続け、 1999年には献血10万件当り1.026となったが(本号20ページ参照)、 2000年はこれをやや上回り、 献血件数5,877,971中67、 献血10万件当り1.140(男 1.812、 女 0.167)となった(過去最高値)(図5)。陽性例67の中にはNAT(核酸増幅検査)のみの陽性3が含まれている(本号6ページ参照)。

 4.保健所におけるHIV相談と抗体検査:2000年の保健所におけるHIVに関する相談件数は107,256件で、 過去最多の1992年(251,926件)に対し、 この4年間は半数以下の状態が続いている。HIV抗体検査数については、 1998年53,218件、 1999年48,218件、 2000年48,620件であり、 同じく1992年(135,674件)に対し半減している。

2000年にはHIV感染報告数がやや減少したものの、 過去2番目に多かった。この数値は、 AIDS未発症だが血清抗体検査でHIV感染が判明したものの報告数であり、 抗体検査を受けていない人の中でのHIV感染者の数はわからない。今後、 HIV感染を拡大させないためには、 HIV/AIDSに関する相談・検査の窓口を幅広く誰もが受け易い場所や時間帯に設定するなど、 より積極的なエイズ予防対策を進めるべきである。

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