黄熱ワクチン:最近の論点

(Vol.23 p 18-19)

黄熱は中央アフリカと南米の地方部に見られる、 蚊媒介性の急性熱性疾患である。特異的治療手段はなく、 致死率は20〜50%である。黄熱ワクチンは、 現在WHOが正式に接種証明書を発行している唯一のワクチンであり、 特定の国では入国時に接種証明書が必要である。

黄熱ワクチンは毎年1億本製造され、 今までに4億人以上が接種している。接種後の脳炎発生が報告されており、 その推定発生率が、 9カ月未満の乳児では1,000人に0.5〜4人、 9カ月以上では800万人に1人であることから、 現在9カ月未満の乳児にワクチン接種は行っていない。

WHOは、 黄熱ワクチンは非常に有効かつ、 安全であると述べている。しかし最近Lancetに、 1996年〜2001年の間に黄熱ワクチン接種によって6例の死亡例を含む7例の重篤な副反応が報告された。著者らは、 黄熱ワクチン後の重篤な副反応は非常に少ないものの、 流行地への旅行は感染の危険が高いこと、 高齢者への接種時には十分注意すること、 旅行計画をふまえて接種が必要な旅行者だけに実施することなどを勧告した。一方でLancetの報告後、 専門家により1996〜2001年の間に発生したワクチン未接種旅行者での黄熱の死亡例[1996年ブラジルへのスイス人、 アメリカ人旅行者、 1999年コートジボワールへのドイツ人写真家と、 ベネズエラへのアメリカ人旅行者、 2001年ガンビアへのベルギー人旅行者(外国情報参照)]発生も強調された。黄熱は重篤で時には致命的な疾患である。流行地に未接種で旅行することは危険であり、 接種の是非は専門家および本人とで、 ワクチン接種に伴う危険と感染の危険性とを比較検討して決定するべきである。

(SCIEH Weekly Report35、 No.2001/47)

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