輸血関連のウエストナイルウイルス感染−ヨーロッパにおける影響

(Vol.24 p 270-270)

北米では2002年に、 前年に比べウエストナイルウイルス(WNV)感染者の大幅な増加が報告され、 地理的にも期間的にも拡大がみられた。この傾向は2003年も続いていると思われる。

ヨーロッパでは、 夏季に北米旅行をした人が献血者に含まれる可能性があるため、 特に輸血に関連したWNV感染が懸念されている。2002年8月28日〜2003年3月1日の間に米国CDCは、 14名の供血者からの輸血によると思われる21例のWNV感染を確認した。14名の供血者のうち5名は無症状で、 残りの9名は有症状であったが、 献血後の発症者もみられた。輸血によるWNV感染の予防としては、 リスクのある献血者の排除、 血液のスクリーニング、 献血された血液の不活化処理などの方法が考えられ、 どの方策を採用するかは、 疾患の疫学や有病率、 検査方法や不活化方法の有無、 献血者数の増減などを考慮する必要がある。

米国の方針:米国では2003年7月に、 感度と特異度ともに高い核酸検査法(Nucleic Acid Test、 NAT)が導入され、 現在、 献血されたすべての血液のスクリーニング検査を行っている。

ヨーロッパの方針:2003年初夏、 英国はWNV危険地域(現在はアメリカ合衆国およびカナダ全土)を6月1日〜11月30日の期間中に旅行した人に対して、 帰国後28日間の献血の禁止、 また、 上記に該当し、 さらにWNV感染や感染が疑われたり、 頭痛や発熱などの症状がみられた場合は、 発症後28日間の献血を禁止とすることを定めた。これによる献血者数への影響は不明であるが、 顕著に減少した場合には血液スクリーニングを導入することも検討している。輸入血液に関してはその製造過程で不活化されていることと、 アメリカとカナダでは血液スクリーニングが導入されていることから、 感染の危険は非常に少ないと考えられる。その他のヨーロッパ諸国においても、 英国と同様の献血の禁止を導入したか、 もしくはその検討をしている。

(Eurosurveillance Weekly、 7、 No.34、 2003)

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