福井県では2003年6月上旬以降の無菌性髄膜炎患者から、 比較的分離報告の少ないB群コクサッキーウイルス1型(CB1)がまとまって分離されている。8月19日現在までに搬入された無菌性髄膜炎患者由来検体64検体(39症例)におけるウイルス分離状況は、 CB1が24検体(14症例)、 エコーウイルス6型(E6)が4検体(4症例)となっている。患者の年齢は、 7歳以下に34症例(87%)が集中する低年齢層中心の分布を示したが、 大人の発症(29歳と31歳各1症例)もみられた。
CB1分離株は、 CaCo-2およびVeroE6細胞でCPE陽性を示し、 デンカ生研製の単味抗血清で容易に中和された。CB1の材料別分離数は、 糞便(10/11検体)がもっとも多く、 咽頭ぬぐい液(8/13検体)、 髄液(6/40検体)の順であった。なお、 7月以降はCB1以外にも、 E6が4症例の髄液から分離された。
今シーズンの無菌性髄膜炎について、 福井県感染症発生動向調査における患者報告状況とウイルス分離結果を図に示した。6月上旬〜7月上旬にかけての患者発生は主に丹南地区内での発生であり、 同時期に搬入されCB1が分離された検体は、 ほとんどが丹南地区に住む患者由来だったため、 丹南地区における初期の流行はCB1が主要病原体と考えられた。7月上旬からは丹南地区に隣接する福井地区で患者発生が報告されるようになった。この時期の患者は、 福井地区および福井地区に隣接する坂井・奥越両地区に散らばっており、 CB1とE6の両方が分離されている。第33週(8月中旬)の時点でも患者発生報告が続いており、 引き続き注意が必要である。
ちなみに福井県における前回の本格的流行は、 CB1が1994年、 E6が1999年であった。
福井県衛生環境研究センター 東方美保 中村雅子 川畑光政 堀川武夫