アデノウイルス分離状況、 2002〜2003年−大阪府
(Vol.24 p 261-262)

*小児科・基幹定点から分離されたアデノウイルス、 2003年

2003年1月以降に大阪府小児科・基幹定点から分離されたアデノウイルスを表1に示した。ウイルス分離にはHEp-2細胞、 Vero細胞を用い、 同定は中和試験で行った。合計33株のアデノウイルスが分離され、 その内訳はアデノウイルス3型が19株、 2型が9株、 1型が4株、 5型が1株であった。アデノウイルス2型、 3型は1〜6月のいずれの月も分離されているが、 3型は6月に増加傾向を示し、 2003年の大阪での夏季の咽頭結膜熱はアデノウイルス3型が主流であると思われた。

アデノウイルスが分離されたこれらの患者の臨床診断名は、 咽頭結膜熱が24例(うち2例は肺炎を伴う)、 インフルエンザが5例、 急性脳炎が2例、 ヘルパンギーナ、 無菌性髄膜炎が各1例であった(表2)。急性脳炎2例からアデノウイルスが分離されているが、 検体の由来が便および結膜であり、 かつ髄液および咽頭ぬぐい液はウイルス分離陰性のため、 脳炎の直接的な原因とは考えにくい。無菌性髄膜炎の1例も結膜炎症状を伴っており、 髄液の検査は実施していないため、 アデノウイルスを起因ウイルスと断定できない。しかしながら、 中枢神経系疾患に関連してアデノウイルスが3例分離されていることは、 アデノウイルスと中枢神経系疾患に何らかの関連があることを示唆しているのかもしれない。

*三島地区眼科定点から分離されたアデノウイルス、 2002年4月〜2003年6月

2002年4月〜2003年6月までに、 大阪府三島地区の2病院において流行性角結膜炎と診断された患者からウイルス分離を行った結果、 表3に示すアデノウイルスが分離された。ウイルス分離にはHEp-2細胞を用い、 同定は中和試験によって行った。

分離されたアデノウイルスは、 時間的な経過の中で集積性が認められた。すなわち、 2002年4〜6月はアデノウイルス4型と19型で、 2002年11月はアデノウイルス3型、 2003年2〜3月はアデノウイルス2型、 2003年5〜6月はアデノウイルス37型であった。アデノウイルス8型は2002年5月と2003年5月に検出され集積性はなかった。アデノウイルス2型、 3型分離例では、 上気道炎や胃腸炎症状を伴う症例が57%(4/7)にみられた。

この地区では血清型の異なったアデノウイルスの時間的集積性が認められたが、 このことが眼科領域におけるアデノウイルスの流行に反映しているかどうか、 あるいはその他の疫学的事象と関連しているかどうかは不明であり、 継続的な調査が必要である。

大阪府立公衆衛生研究所・ウイルス課 加瀬哲男 森川佐依子 宮川広実

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