ミャンマーへの渡航者から分離されたインフルエンザウイルス−沖縄県
(Vol.24 p 259-260)

2003年9月4日採取検体よりB型インフルエンザウイルスが分離されたので報告する。患者はミャンマーに渡航歴のある28歳の女性で、 滞在期間は不明だが9月1日まで旅行している。発症したのは9月1日で、 SARSを心配して9月4日に県内中部の医療機関を受診。症状は38.8℃の発熱、 関節痛、 筋肉痛、 上気道炎、 下痢を呈しておりインフルエンザと診断された。

9月6日、 医療機関より搬入された喀痰についてウイルス分離を行った。MDCK細胞に接種後3日目にCPEが観察され、 この培養上清について0.3%ガチョウ赤血球を用いてHA試験を行ったところHA価は128であった。

国立感染症研究所から分与された2002/03シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行った結果、 抗血清A/New Caledonia/20/99(H1N1)、 A/Moscow/13/98(H1N1)、 A/Panama/2007/99(H3N2)、 B/Shandong(山東)/7/97(ホモ価、 各5,120、 640、 1,280、 640)に対してはいずれもHI価<10であったが、 B/Hiroshima(広島)/23/2001(ホモ価 640)に対してはHI価320を示したことからB型インフルエンザと同定された。患者は旅行中に発症していることから、 渡航先でB型インフルエンザウイルスに感染したものと考えられる。

B型インフルエンザウイルスは山形系統とVictoria系統に大別されており、 今回の分離株は山形系統のB/Hiroshima(広島)/23/2001類似株で、 2003/04シーズンワクチン株の系統とは異なることから今後の動向に注意する必要がある。

今年のインフルエンザシーズン期間中のSARS再流行が懸念されているが、 インフルエンザはSARSと鑑別を要する疾患のうちのひとつであるため、 海外渡航者におけるインフルエンザの確実な診断は重要と思われる。

沖縄県衛生環境研究所 平良勝也 糸数清正 中村正治 久高潤 安里龍二

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