急性脳症、 発疹症等からのA群コクサッキーウイルス9型の検出−岩手県
(Vol.24 p 263-263)

感染症発生動向調査病原体検査において、 県央地区の医療機関で、 7月〜8月にかけて採取された6症例から、 A群コクサッキーウイルス9型(CA9)が検出されたのでその概要を報告する。

CA9は、 7月22日に採取された発疹症の患者の咽頭ぬぐい液から初めて検出され、 その後、 発疹症(2名)、 急性咽頭炎(1名)、 不明熱(1名)、 急性脳症(1名)から検出された。各症例の症状、 採取日、 検体の種類等は表1のとおりである。なお、 患者の予後は、 急性脳症の症例(死亡)を除き、 良好であった。

検査はウイルス分離とRT-PCRによる遺伝子検査を行った。ウイルス分離にCaCo-2、 Vero、 RD-18S、 HEp-2の4種類の細胞を用いたところ、 症例No.5を除く5検体からウイルスが分離された。CaCo-2細胞およびRD-18S細胞でCPEが認められ、 特にCaCo-2細胞で感受性が高く、 接種後3〜5日後に強いCPEを認めた。中和試験はデンカ生研製エンテロウイルス混合抗血清(J、 K)および国立感染症研究所から分与された単味抗血清(CA9)で容易に中和された。

ウイルス分離陽性であった5症例の培養上清、 および症例No.5の髄液からRNAを抽出し、 VP4領域についてRT-PCR法を行ったところ、 いずれの検体も陽性であり、 増幅産物のシークエンスでは、 6株の塩基配列が完全に一致した。また、 増幅領域の207塩基についてBLAST2 searchを行ったところ、 accession number AJ314833(1999年にローマで分離されたCA9)と最も近く、 相同性は94%であった。

その後、 CA9は検出されていないが、 今後の動向に注目したい。

岩手県環境保健研究センター
高橋朱実 佐藤直人 藤井伸一郎 佐藤 卓 齋藤幸一 田澤光正

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