3種類の腸管出血性大腸菌O157が検出された大学内集団感染事例−千葉県

(Vol.25 p 144-145)

2002年6月26日(水)にA保健所に腸管出血性大腸菌O157(以下O157)患者発生届けがあった。患者は21歳のC大学学生で、6月21日に嘔吐、腹痛、下痢で発症し、22日に医療機関を受診していた。患者聞き取り調査から、同大学の同じクラブに下痢をきたした学生がいることが判明したため、同クラブの学生に検便を実施した。翌27日にはB保健所にもO157患者発生届けがあり、この患者は同大学の異なるクラブの学生であった。このためC大学内でのO157集団感染を疑い、同大学と協議の上、6月28日にO157集団発生調査についての全学説明会を行った。

C大学の学生および大学職員と、それらの接触者を対象とした2,539名の聞き取り調査および便検査の結果、182名の有症状者と69名のO157陽性者が判明した。菌陽性者の大部分は学生食堂で食事をしており、調査の結果、大学近辺のコンビニエンスストアおよび飲食店利用者からの食品由来健康被害は認められなかった。また、菌陽性者には共通するイベントがなく、各学年にまたがっており、所属するクラブの数は20に、また、住んでいるアパート等の数は48に及んでおり、これらの分布に偏りはなかった。調査の過程で感染源として学生食堂が強く疑われたため、C大学は6月29日より学生食堂の営業自粛の処置を取った。

千葉県衛生研究所の菌株検査では、69株中68株はStx2単独産生株で、1株がStx1&2産生株であった。Stx2単独産生の68株は、パルスフィールド法によるDNAパターンから66株と2株の2グループに分けられた(図1)。

この同一菌株によると考えられる66例の菌陽性者で何らかの消化器症状をきたした49例の発症日は、6月9日〜7月1日と長期に及んでいたが、6月21日にピークを持つクラスターが認められた(図2)。上記の疫学調査の結果からは、このクラスターの感染源は学生食堂の単一曝露の可能性が高く、二次感染の可能性は低いと考えられた。さらに、何らかの消化器症状がある菌陰性者のピークは6月26日にあり、菌陽性者のそれとは異なっていた(図2)。26、28、29日では有症状者中菌陽性者の率が21日と比較して有意に低い(χ2検定、p <0.05)ことから、26日以降に大学関連の調査が始まっていることと合わせて、大きな有症状者バイアスが生じたことが示唆された。

学食の検食検査、学食の環境ふきとり検査からはO157は検出されず、学内飲料水(市上水道を水源とする簡易専用水道)の給水栓における残留遊離塩素濃度は0.2〜 0.5mg/l で、水道水質基準である 0.1mg/l を超えていた。

本事例では、対象が2,500人を超える大きな集団であったため、同じ時期に同じ集団で、異なる感染源によるO157陽性者の紛れ込みがあったと考えられた。また、調査開始後に有症状者数が増加し、菌陽性者率が低くなっていることから、流行曲線の発症日に影響を与える有症状者バイアスが生じたと考えられた。

千葉県衛生研究所
一戸貞人 三瓶憲一 齋加志津子 小倉 誠 内村眞佐子 小岩井健司*
千葉県勝浦保健所 日下秀昭** 細矢 滋***
(* 現千葉県野田保健所、**現千葉県健康福祉部薬務課、*** 現千葉県鴨川地域保健センター)

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