2つの保育園にわたったSTEC O157集団事例−宮崎県

(Vol.25 p 146-147)

2003年11月、宮崎県において、2つの保育園にわたったSTEC集団事例が発生したのでその概要を報告する(図1)。

11月12日、医療機関から、A保育園の2歳女児(患者1)のSTEC O157(Stx1&2)患者発生届けがあり、続いて翌13日にも、同保育園の3歳女児(患者2)のO157患者発生届けが出された(表1)ため、保健所は、A保育園における集団発生の可能性を疑い、直ちに調査を開始した。すなわち、A保育園に対して、保健所は、全保育園児126名(患者は除く)、園の職員24名、患者家族7名について健康調査および検便を実施した。さらに、A保育園のトイレふきとり3検体、および施設内で出された11月1日および11月4〜7日の5日分の昼食の検食14検体の検査も実施した。その結果、患者を除く保育園児、職員、およびトイレふきとり、検食からはO157は検出されなかったが、患者2の母(保菌者3)から検出された。なお、その間、11月15日には本保育園で5歳女児(患者4)のO157発生が届け出された。

一方、保健所の聞き取り調査で、11月8日に、既に発症していた患者1を混じえ、同一場所で長時間(約15時間)接触したグループ(5家族)があったことが判明した。そこで、これらの5家族についても検便を実施した結果、2歳男児(患者5)(患者1とは別のB保育園に通園)およびその母親(保菌者6)からO157(Stx1&2)が検出された。さらに11月26日に、患者5と同じB保育園で同じクラスの2歳男児(患者7)のO157発症が届け出された。この状況から、B保育園についても集団発生の可能性を考慮し、園児(0〜5歳)126名、職員24名全員の健康調査を行ったが、有症状者はなく、職員のみ検便を実施したところ、結果は全員陰性であった。また、患者7の家族4名を検査した結果、母親より、菌は検出されなかったが、PCR法でStx1&2遺伝子の保有が確認された。母親の勤め先がファミリーレストランであったことから、二次汚染防止のため、従業員24名について検便を実施したが、当該菌は検出されなかった。これ以後、A、B両保育園でのO157発生は認められていない。

患者5名および保菌者2名から検出されたO157分離株が、同一起源に由来するものであるかどうかを確認するために、制限酵素Xba Iを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子多型解析を行った。その結果、図2に示すように、レーン1〜6の分離株は全く同じPFGEパターンを示しており、これらは同一起源に由来すると推定された。また、レーン7の分離株は他の分離株とバンドが2本異なっていたが、この株も、今回の一連の集団感染を引き起こした株と同じ起源である可能性が大きいと考えられた。

以上のことから、今回の集団事例では、O157感染が、初発患者からA保育園の園児やその家族、さらに一緒に長時間接触したグループを通じB保育園の園児やその家族へと、連鎖的に広がったものと考えられた。しかし、初発患者が感染した原因については、A保育園で出された給食の検食、施設のふきとり、全保育園児(届け出患者を除く)、全職員等の検便の結果が、すべてO157陰性であったことから、A保育園で出された食事である可能性は低く、また初発患者の家族に感染が認められなかったことから、家庭からの感染も証明できず、特定することができなかった。

宮崎県衛生環境研究所 河野喜美子 東 美香 平崎勝之 鈴木 泉

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