保育園における腸管出血性大腸菌O26集団感染事例−金沢市

(Vol.25 p 148-149)

2003年8月23日(土)、金沢市内の医療機関から保健所に、O26(VT1陽性)の発生の届け出があった。患者(2歳女児)は市内の保育園(園児131名、職員23名)の園児で、8月20日から腹痛、血便を認め、21日に受診し、23日に菌が検出された。

保健所において保育園の園児等の健康状況を調査したところ、患者と同じ2歳児クラスの園児4名が、1週間以内に下痢症状を認めており、この4名と全職員、家族の検便を開始した。その結果、25日に園児3名の陽性が判明し、対象を全園児に拡大したところ、新たに16名(園児9名と家族7名)からO26が検出された。さらに再検査で9名(園児7名、職員2名)からO26が検出され、菌陽性者は園児20名、職員2名、家族7名、計29名(最初の届け出患者を含む)となった。

表1は菌陽性者の概要である。保育園は年齢別に6クラスに分かれている。クラス別陽性者は、2歳児クラスが11名で、その他の9名のうち、1歳児クラスの3名を除く6名は、2歳児クラスの菌陽性者の兄弟姉妹であった。職員2名も2歳児担当であった。

一方、保育園が冷凍保存していた2週間分の給食の保存食、ふきとり検査からはO26は検出されなかった。

患者・感染者から分離された菌株29株(EHEC O26:H11、VT1産生)は、国立感染症研究所での解析の結果、パルスフィールド・ゲル電気泳動型は1株を除いて一致し、またその1株についても3本差で同一であり、同一の菌株による集団感染が示唆された。

菌陽性者のうち、下痢などの症状を認めた者は18名で、発症時期は8月〜9月にかけてばらついていた。2歳児クラスの菌陽性者の症状出現期間と家族内菌陽性者を図1に示した。症例Aは7月末と8月中旬に2度症状が出現し、家族には症状が認められなかったため、O26感染の時期は特定できなかった。

発症時期に特異的なピークは認められなかったこと、また家族内での発症時期から、患者あるいは感染者により保育園にもたらされたO26の二次感染によって、2歳児クラスと1歳児クラスの中で園児間に広まり、さらに家族内で二次感染をおこしたと推察された。

2歳児クラスと1歳児クラスは、図2のように部屋の中にトイレを共有しており、トイレを通って行き来が自由にできた。また、両室は棚で仕切られており、棚の上は共有されていた。1〜2歳児頃は排泄の自立が始まり、ひとりでトイレにいくようになる。職員はオムツ交換後の手洗いの徹底とともに、園児の排便後・食前の手洗いに加えて、トイレに出入りした後の園児の手洗いに十分配慮することが重要と考えられた。

8月であり、保育園では簡易プールをクラスごとに時間をきめて順番に利用していた。しかし、他のクラスへの感染拡大はなく、また、今回プールが感染経路の一つと考えられる積極的なデータはなかったが、今後の発生予防として簡易プールの衛生管理も重要と考える。

保育園におけるO26感染が判明したときには、既に家族内感染が進行していた。保護者説明会を開催し、また家族ごとに個別に保健指導を実施したが、その後も2家族に兄妹間の感染が見られ、幼児における二次感染防止の難しさを感じた。

金沢市保健所
下浦涼子 加藤一恵 出戸正子 齊藤理香 梨子村絹代 吉藤香代 櫻井 登
金沢市役所 浅香久美子

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