2003年9月〜2004年3月にかけてデンマークで、Vero毒素産生性大腸菌(VTEC)O157による患者25名が発生した。発生は大コペンハーゲン地域に限局しており、18名の小児と7名の成人が届けられた(男性6名、女性19名)。主な症状は腹部疝痛と下痢であり、腎不全はみられなかった。便の培養で得られた菌株は、同一の特徴的な遺伝子パターンを示した。
2004年1月15日以降に発生した患者11名と対照55名を調査したが、11名中8名は一次感染者、3名は二次感染者と思われる。一次感染者8名のうち、7名が特定のスーパーマーケットチェーンで商品を購入していた[matched オッズ比(mOR)7.7; 95%信頼区間(CI): 0.9〜65]。他のチェーン店は関連がなかった。聞き取り調査の結果、感染リスクの増大に関係する食品は、特定の搾乳所からの牛乳のみであった。一次感染者8名中5名が問題の搾乳所の牛乳を飲んでおり、それは対照39名中では5名であった(mOR 8.7; 95%CI: 1.6〜48)。残りの一次感染者3名は、この搾乳所の牛乳を飲んだかどうか覚えていなかった。
この集団発生は、特定のスーパーマーケットチェーンで販売された食品を通じて発生したと思われるが、そこはこの搾乳所の乳製品を大量に販売している。この搾乳所の牛乳が、非常に少量のVTEC O157に汚染されていたことが疑われる。3月26日にデンマーク獣医・食品行政部により報道発表された後、問題となった搾乳所での牛乳の製造は一時的に中止され、プラントの清掃を行い、低温殺菌における温度を高くした。それ以降、新たな患者は発生していない。この搾乳所がVTEC O157に汚染されているかどうかの調査が行われたが、結果は陰性であった。さらに、この搾乳所に供給をしているウシの群を調査することが計画されている。
コペンハーゲンの医師に対しては今でも、腹部疝痛と下痢を呈する患者で腸管病原性細菌を目的に便培養を依頼する際には、VTEC O157の検査も依頼するよう、公式に通知されている。
VTEC O157によるこの集団発生は、デンマークで記録された一般的なものとしては初めてのものである。以前での牛乳および乳製品に関連したVTEC O157の集団発生としては、英国での報告がある。
(Eurosurveillance Weekly 8, Issue 20, 2004)