寿司店を感染源とした赤痢の集団発生事例−豊田市

(Vol.25 p 153-154)

2003年10月3日、豊田市保健所に市内医療機関より、赤痢患者1名が発生した旨の「2類感染症届出票」が提出された。また10月4日には愛知県西加茂郡三好町と愛知県日進市内の医療機関よりそれぞれ1名ずつ届出票が提出された旨の報告が、愛知県健康福祉部より10月6日にあった。これら3名の赤痢患者についての喫食状況調査を行ったところ、全員が豊田市内の寿司店で飲食をしていたため、保健所は食中毒と推定し寿司店の調査を実施し、営業の自粛を指示した。さらに10月7日にも豊田市内の医療機関より1名の届出票が提出された。これらの患者4名から共通して赤痢菌(Shigella flexneri 2b)が分離されたので、当該店舗を原因とする食中毒と断定し、当該施設に対し10月7日付けで営業の禁止処分を行った。

患者の発症状況等から曝露日は9月27日と推測し、報道機関を通じた一般住民への情報提供を行い、同店での喫食者の把握と検便、および二次感染防止対策を講じた。その結果、9月26日までの喫食者からは食中毒患者は認められず、9月27日〜28日の2日間に当該店舗で喫食した者から、新たに6名の有症者が判明した。なお、うち1名は当該店舗の臨時調理従事者であった。また、この2日間に当該施設を利用した人数は1,191名(当該店舗レシートから把握した数)であった。調査の結果、本食中毒事件における有症者は10名となり、このうち感染症法に基づく赤痢患者等の届け出は8名であり、その内訳は市内5名、市外3名(愛知県3)であった。

愛知県衛生研究所において、豊田市、愛知県で分離された菌株を収集し、10種類の抗菌薬(ABPC、SM、KM、TC、MINO、CP、CL、NA、FOM 、PPA )に対する耐性パターンを観察したところ、いずれの菌株とも6剤耐性(ABPC、SM、TC、CP、NA、PPA)を示し、制限酵素Xba Iを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動法による解析結果においても同一パターンであった()。

今回の赤痢菌(S. flexneri 2b)による食中毒事例は、患者等の発生状況、喫食調査、細菌学的検査の結果から、赤痢菌に感染した寿司店臨時調理従事者からの二次汚染と、原材料が汚染されていた可能性などが考えられたが、これらのいずれの可能性についても汚染経路の特定には至らなかった。

豊田市保健所
中川智彦 酒井高子 角谷 裕 渡邉克典 伊藤 求

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る