エコーウイルス16型の分離状況−宮崎県
(Vol.25 p 152-153)

Echovirus 16型(以下E16)による発疹症は“Boston exanthem”として夏季に多く発症することで知られている。IASRホームページのウイルス検出状況・集計表「年別1982年〜2003年・エンテロウイルス(2)(2004年4月22日現在)」(http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/ent82002.gif)をみると、E16の分離数は1985年に112と最も多く、次いで1995年の71となっている。本県でも、1995年に9株のE16が分離されているが、2003年10月〜2004年1月にかけて9年ぶりに13株を分離したので、その概要を報告する。

E16が分離された患者の発症年齢および性別をみると、13例中12例は発疹症の小児(0〜3歳・平均年齢1.01歳、男子8名・女子4名)で、残りの1例は無菌性髄膜炎(2003年11月8日検体採取)の6歳女子であった。一方、1995年に分離された9例のうち4例は発疹症の小児(0〜5歳・平均年齢1.25歳、男子3名・女子1名)で、3例は無菌性髄膜炎の患者(0〜9歳・平均年齢6.00歳、男子3名)であった。残り1例は結膜炎と発熱を呈した10歳の女子であった。エコーウイルスは、乳幼児では発疹症を起こしやすく、幼・学童期では無菌性髄膜炎を起こしやすい傾向があると言われているが、双方の年の流行でもその傾向が見受けられた。

疫学的には散発例が主であり、保育所や幼稚園での感染例が1例で、家族内感染も1例であった。

臨床症状については、発疹症で依頼された患者をみると発熱9例(平均38.5℃)、発疹(丘疹2例、紅斑10例)、上気道炎1例、中耳炎1例であった。定点医によると、臨床症状からエンテロ系の発疹であることを容易に判断できるが、その他のエコーウイルスによる発疹との比較については、出現部位や形態に特異性はなかったということであった。無菌性髄膜炎で検査依頼された患者は最高体温37.6℃で、初診時に嘔吐・頭痛・頸部硬直がみられたが、2日目で解熱し、4日目には頭痛も消失し、5日目に退院した。なお、発疹症の患者で上気道炎のみられた1例(3カ月女子)は気管支炎・肺炎を併発して入院しているが、その他の発疹症の患者は全員通院治療で軽快している。

E16が分離された検査材料は咽頭ぬぐい液11、鼻汁1および髄液(無菌性髄膜炎)が1であった。分離にはCaCo-2、VeroおよびHeLaの3種類の細胞を用いたが、CaCo-2細胞でのみ分離された。分離陽性例の採取時期は1病日〜5病日(平均 3.5病日)であった。細胞変成効果(CPE)は検体接種後2〜4日で明瞭となり、咽頭ぬぐい液および鼻汁由来の12株はすべて1代でCPEが認められた。また、髄液由来株は2代目の2日目で観察された。なお、ウイルスの同定は中和反応により行った。中和血清として、EP95(国立感染症研究所分与血清)およびE16単味血清(デンカ生研製)を用いた。

上記ホームページの集計表「月別2002年11月〜2004年4月・エンテロウイルス」(http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/v2911.gif)および本月報 Vol.25, No.4(2004年4月号)をみると、E16の場合、2003年の10月2例(うち宮崎県2)、11月4例(同4)、12月8例(同6、福島県1、福岡市1)と、宮崎県で地域特異的に流行しているように見受けられるが、不明発疹症での検体提出数が他県に比べ多いことも関係あるかもしれない。今回の分離では無菌性髄膜炎の患者は1例であったが、9年ぶりの分離であることから、感受性者の蓄積も推定される。加えて、1995年に分離された9株のうち6月〜9月にかけて7株(78%)が分離され、そのうち4例(57%)が無菌性髄膜炎であったことから、今年の夏にかけて無菌性髄膜炎の発生動向には注意が必要であると考えている。

宮崎県衛生環境研究所・ウイルス科 元明秀成 岩切 章 山本正悟 平崎勝之
  同       ・企画管理課 塩山陽子

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