集団かぜからのB型インフルエンザウイルスの分離−名古屋市

(Vol.25 p 152-152)

名古屋市における2003/04シーズンの集団かぜの発生は、2004年2月24日(第9週)で終息していた。4月21日(第17週)、再び緑区内の小学校で集団かぜの発生があり、B型インフルエンザウイルスを分離したので、患者発生状況、分離状況、血清検査成績について報告する。

患者発生状況:集団かぜは小学2年のクラス閉鎖であった。発生時の当該小学校の患者発生状況を表1に示した。当該区の感染症発生動向調査における、インフルエンザ患者数は、第17週に1名の報告があるが、前後の週は患者数の報告はなかった。

ウイルス分離状況:5名の患者から、うがい液を採取し、定法に従い検体処理し、MDCK細胞に接種した。全例に細胞変性効果が観察された。0.75%モルモット赤血球で、培養上清のHA価を測定した。全例にHA価が認められ、HA価は64〜128倍であった。国立感染症研究所分与の2003/04シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを使用し、HI試験を行った。HI価は、抗A/Moscow/13/98(H1N1)(ホモ価 1,280)、抗A/New Caledonia/20/99(H1N1) (ホモ価 320)、抗A/Panama/2007/99(H3N2)(ホモ価 640)、抗A/Kumamoto(熊本)/102/2002(H3N2)(ホモ価 160)、B/Shandong(山東)/7/97(ホモ価 80)の各フェレット感染免疫血清に対して<10、B/Johannesburg/5/99 (ホモ価 1,280)の羊高度免疫血清に対して、160〜1,280を示した。分離ウイルスは山形系統のB型インフルエンザウイルスと考えられた。

血清検査成績(表2):4名のペア血清では、分離株に対して全例に抗体価の有意上昇が見られた。B/Johannesburg/5/99に対して3例、B/Shandong(山東)/7/97に対して2例に有意上昇が見られた。

今シーズン名古屋市では、B型インフルエンザウイルスは分離されていなかった。B型インフルエンザの集団かぜの発生があったにもかかわらず、地域のインフルエンザ患者数の増加が見られなかったのは、時期がずれると、インフルエンザの診断名がつきにくいことも一因と考えられる。

名古屋市衛生研究所微生物部 後藤則子 木戸内 清
健康福祉局健康部健康増進課結核感染症係 林 昌徳
緑保健所保健予防課保健感染症係 原田清仁 小酒井葉子 日下部一雄

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