2003年1月〜2004年7月に東京都内で発生した髄膜炎菌性髄膜炎

(Vol.25 p 207-207)

2003年1月〜2004年7月までに、東京都内で8人の髄膜炎菌性髄膜炎患者の発生報告があった。都内の本疾患患者は1998年に4人、1999年に5人と発生が多かったが(IASR Vol.21, No.3参照)、その後は2000年に1人、2001年に2人、2002年に1人であった。しかしながら、2003年に4人、今年(2004年)7月までに昨年と同じ4人の報告があり、増加傾向が見られている。2003年には、髄膜炎患者の他に、喀痰や咽頭に保菌し、リンパ節腫脹を呈した患者も報告されている。また、2004年1月に発症した患者の家族を検査したところ、父親の咽頭ぬぐい液から菌が分離されたが、幸いにも無症状であった。

髄膜炎菌性髄膜炎は一般的には15歳以下で、乳児の発生が多いといわれている。届出のあった髄膜炎患者の年齢は、1歳未満2人、10代1人、20代2人、50歳以上3人で、届出報告の中には60〜70代の高年齢者もみられた。男女比は男性4人、女性4人で、差は認められなかった。また感染地は国内7人、不明1人であった()。

髄膜炎菌はその莢膜の多糖体抗原性により13の血清型に分類される。髄膜炎患者から分離された株の血清型はB群3、Y群2、C群1、UT(型別不能)2であったが、UTの1株はPCRによる遺伝子検査の結果、Y群遺伝子を保有していた。前述の髄膜炎患者の父親由来株は、患者と同じB群であった。血清型C群菌により発症した患者は、咽頭炎を発症後3日目に電撃性紫斑病を呈し、全身状態が悪化したが、紫斑の形状から髄膜炎菌性と早期診断され、救命されている。

一方、2003年に届出された髄膜炎菌性髄膜炎患者は、全国で18人であった。また、2004年は27週までに青森、茨城、埼玉、岐阜、鳥取、山口、宮崎が各1人、愛知2人、神奈川3人、東京4人の計16人が報告されている。2003年は30週まで全国において13人の発生が報告されたが、30週以降52週までの報告は5人であった。昨年と同様であれば、2004年後半の報告数は減少すると予想される。しかし、世界的にみるとアフリカなどで、髄膜炎菌性髄膜炎の患者発生報告が多く見られており、海外からの菌の持ち込みや、健康保菌者の存在、米国や英国では集団感染の報告もあることから、今後とも本症の発生動向を監視していく必要がある。

東京都健康安全研究センター・微生物部
遠藤美代子 畠山 薫 奥野ルミ 向川 純 柳川義勢 諸角 聖

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る