名古屋空港に帰国した海外渡航者から2004年8〜9月に3株のA香港型インフルエンザウイルスが分離されたので報告する。
各症例の概要を表に示す。症例1は帰国日までにインフルエンザ症状を発症し、名古屋空港検疫所によるサーモグラフィー検査で発熱が認められたため、症例2、3は自己申告があったため問診後、咽頭ぬぐい液を採取した。定法に従い検体処理し、MDCK細胞に接種したところ、細胞変性効果が観察された。
国立感染症研究所より2003/04シーズン用に分与された検査キットで0.75%モルモット赤血球を用いてHI試験を行ったところ、すべての株について抗A/New Caledonia/20/99(H1N1)血清(ホモ価 160)、抗A/Moscow/13/98(H1N1)血清(ホモ価 320)、抗B/Shandong(山東)/7/97血清(ホモ価 160)、抗B/Johannesburg/5/99血清(ホモ価 320)では、いずれもHI価<10であったが、A香港型のA/Panama/2007/99(H3N2)抗血清(ホモ価 320)でHI価10、A/Kumamoto(熊本)/102/2002(H3N2)抗血清(ホモ価 160)でHI価 160を示し、また本シーズン(2004/05)のワクチン株のA/Wyoming/03/2003(H3N2)抗血清(ホモ価 160)ではHI価 160を示し、類似していた。さらに、HA遺伝子HA1領域の遺伝子解析を行い、アミノ酸配列を推定したところ、昨シーズンの愛知県下の分離ウイルスと比較し、3〜6カ所のアミノ酸が置換していた。このうち、抗原決定領域と考えられている 145番目のアミノ酸が3株ともにリジンからアスパラギンに置換していた。
2004(平成16)年10月第1週現在までのところ、愛知県下ではインフルエンザ患者発生の報告は当該症例以外なく、地域流行等も観察されていない。しかし、今回分離された3株と同様にA香港型インフルエンザウイルスが2004(平成16)年9月に大阪府においても分離されていることから(本号次記事参照)、同タイプのウイルスの今後の動向を注意深く監視していく必要があると考えられる。
愛知県衛生研究所 佐藤克彦 秦 眞美 榮 賢司
厚生労働省名古屋検疫所名古屋空港検疫所支所
熊谷則道 清水なつき 柳井慶明 橋本迪子