インフルエンザの地域流行−宮城県
(Vol.26 p 40-41)

県内の一地域において、2004年11月下旬より始まり警報レベルに達したインフルエンザの流行について概要を報告する。

宮城県における2004/05シーズンのインフルエンザの流行は第46週に石巻保健所管内で始まり、第48週には患者数が急増した。そこで、同管内の定点医療機関に検体採取の協力を依頼し、ウイルス分離を行った。第48週に2医療機関で採取された8名の咽頭または鼻腔ぬぐい液のうち、5名の検体からMDCK細胞で接種後2日目にCPE(細胞変性効果)が観察された。ウイルス分離検体について0.5%モルモット赤血球を用い、HA価を測定後、国立感染症研究所より2004/05シーズン用に分与されたインフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を実施した。その結果、5件の分離ウイルスはすべて抗A/New Caledonia/20/99(H1N1)血清(ホモ価320)にHI価320、抗A/Moscow/13/98(H1N1)血清(同640)にHI価40であったのに対し、抗A/Wyoming/03/2003(H3N2)血清(同1,280)および抗B/Johannesburg/5/99血清(同640)、抗B/Brisbane/32/2002血清(同80)には、いずれもHI価10未満を示した。このことから同管内のインフルエンザは、今季のワクチン株であるA/New Caledonia/20/99(H1N1)株と高い反応性を持つAH1株であることが確認された。なお、患者の主な臨床症状は発熱(38.6〜40℃、平均39.4℃)、上下気道炎、嘔気、腹痛であった。

その後、第50週の患者数は定点あたり18.60と注意報レベルを超え、第51週には31.10と、今シーズン初の警報レベルに達した(図1)。同時期に同管内の小学校において集団発生の報告もあり、さらなる流行拡大も示唆されたため、再度12月23日〜25日に患者検体を3医療機関において採取し、ウイルス分離を試みた。その結果、23名中21名よりAH1型インフルエンザウイルスを分離し、依然として同ウイルスによる流行であることが確認された。分離株のHI価および臨床症状は上述の患者と同様であった。

今回確認された流行は、一地域のみで約1カ月にわたり特異的に発生しているが、第46週からの患者数の推移を見ると、定点別では石巻市郊外から発生し、次第に市内中心部へ広がる傾向、年齢別では小児から徐々に成人年齢層に拡大する流行パターンが認められている(表1)。

県内では第52週現在、他地域での流行は顕著でないが、岡本らは仙台市内でAH1型とAH3型インフルエンザウイルスを同時期に分離し、混合感染の可能性も示唆していることから(本号8ページ参照)、県内でどのような広がりをみせるのか、今後の動向に注目している。

宮城県保健環境センター
佐々木美江 菊地奈穂子 山木紀彦 後藤郁男 植木 洋 沖村容子 秋山和夫

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