仙台市における2004年12月のAH1およびAH3型インフルエンザウイルスの分離
  −2つの亜型ウイルスの混合流行による2004/05インフルエンザシーズンの始まり
(Vol.26 p 40-40)

昨(2004)年12月、インフルエンザ様症状を示し仙台市内で医療機関を受診した患者の臨床検体から、AH1型インフルエンザウイルス9件、AH3型インフルエンザウイルス9件が、ほぼ同じ時期に分離され、AH1とAH3型インフルエンザの混合流行の始まりが示唆されたので報告する。

仙台市では2004年7月〜8月に真夏のRSウイルスの流行があり(IASR 25:265-266, 2004)、この流行は9月にはやや治まったものの10月〜11月には夏を上回る流行があり、その流行が12月の2週目まで続いていた。その後RSウイルスの分離が下火になるとともにインフルエンザウイルス分離が始まった。

当仙台医療センター・ウイルスセンターでは呼吸器系ウイルス全般を分離する目的で、ヒト胎児線維芽細胞、HEp-2、Vero、MDCK細胞マイクロプレートに鼻腔または咽頭から採取した臨床検体を日常的に接種しているが、12月中に接種した仙台市内の医療機関由来の約300検体の中から、MDCK細胞で接種3日目に細胞変性が見られ、培養上清が0.75%モルモット赤血球でHA価16〜64程度の血球凝集能を示した検体が、18件見つかっている。

定法により国立感染症研究所より分与された2004/05シーズン用のインフルエンザキットの抗血清を用いてHI試験を実施した結果、9件が抗A/New Caledonia/20/99血清に対し320付近のHI価(ホモ価320)を示し(抗A/Wyoming/03/2003血清に対し<10、B/Johannesburg/5/99に<10、B/Brisbane/32/2002に<10)、AH1型インフルエンザウイルスが同定された。一方、残りの9件では抗A/Wyoming/03/2003血清に対し 640付近のHI価(ホモ価640)を示し他の抗血清に反応せず(抗A/NewCaledonia/20/99血清に対し<10、B/Johannesburg/5/99に<10、B/Brisbane/32/2002に<10)、AH3型インフルエンザウイルスが同定された。

インフルエンザウイルスが分離された18名は12月3日〜27日までに受診した2歳〜9歳の小児17名および母親1名であるが、そのうち14名が12月第3週〜4週の2週間の間に受診していた。

宮城県では、石巻地区で今シーズン初め(第48週)からインフルエンザ患者報告数が急激に増え、それ以降現在の警報にいたる状況が続いており、AH1型ウイルスが分離されている(IASRホームページhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/inti3j.gif、本号次記事参照)が、今回報告した患者のうち12人は仙台市宮城野区内の医院を受診しており、仙台市では1つの区という狭い地域で2つの亜型のウイルスが混合流行している可能性が示唆された。仙台市ではAH1型インフルエンザはここ2シーズン分離はなかったため、今後同亜型のウイルスの流行の動向には注意が必要と思われる。前回流行した2001/02シーズンでも初期のころからAH3、B、C型に混じって分離されていた。それでも全インフルエンザウイルス分離数に対する割合は10%程度であったが(IASRインターネット版速報、2002年1月)、この12月はAH1とAH3型が同等の割合で分離されている。

なお、HI試験の成績から、分離されたウイルスのHAの抗原性は、今シーズンのワクチン株とほぼ同じと考えて良いと思われる。

独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター
岡本道子 近江 彰 千葉ふみ子 伊藤洋子 田中 泉 渡邊王志 鈴木 陽 西村秀一
庄司内科小児科医院 庄司 眞
永井小児科医院   永井幸夫
東北労災病院小児科 高柳玲子

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