インフルエンザ2004/05シーズンは2003/04シーズンに引続いて厚生労働省結核感染症課のインフルエンザ総合対策に基づき(平成16年度「今冬のインフルエンザ総合対策について」)、一般市民への相談窓口がNPO法人バイオメディカルサイエンス研究会内に開設された。本報告では対応したインフルエンザ相談の内容について解析するとともに、インフルエンザを含む感染症対策としての市民への情報提供の方法について考察した。
1)相談者の居住地、職種
2004/05今シーズンは2,444件の相談に対応した。相談者は女性が73%を占め、30代が最も多く41%であった。また、居住地別では東京都が最多で、神奈川、千葉、埼玉、長野、静岡、茨城県の順であった。職種別では主婦が1,114件(46%)、民間企業が447件(18%)、医療従事者が227件(9.3%)であった。
2)相談件数の月別推移
相談数2,444件の月別推移を図1に示す。相談件数は10〜11月が最も多く、12月から徐々に減少した。しかし、1月中旬〜2月に相談が多く寄せられた。これはインフルエンザの流行時期に一致した。2003/04シーズンは2月上旬に流行のピークがあったが、相談件数の増加はなかった。
3)ワクチンに関する相談内容
ワクチンに関する相談数は、1,545件(62%)であった。その内訳を集計し図2に示した。質問は多い順に、ワクチン接種の是非253件(16%)、副反応231件(15%)、接種回数205件(13%)と多岐にわたった。妊婦(125件)、乳児(66件)、幼児(52件)、授乳中の母親(51件)へのワクチン接種についての相談が多く寄せられた。また、ワクチン被接種者のインフルエンザ罹患についての質問は65件(4.2%)であった。図中のその他には、ワクチンの有効期間、接種実施機関、ワクチンと脳症との関係、ワクチン株に関する質問等が含まれている。
4)主婦から寄せられた相談内容
主婦からの相談が全相談件数の約半数を占めたことから、主婦と主婦以外(一般者とする)に二分し、相談内容を項目ごとに集計し表1に示した。ワクチン全般に関する相談では、ワクチン接種時期、接種間隔、また乳児、幼児、妊婦、授乳中の接種について多くの質問を受けた。
考察:近年、若い年代の相談者の中にはインターネットで厚生労働省や国立感染症研究所・感染症情報センターから情報を得ている人が多く、その上での質問もみられた。厚労省、感染症情報センターがWeb 上で提供しているインフルエンザQ&Aに「妊婦および授乳中あるいは育児中の方へ」といったセクションを設けて解説を追加することも必要かと思われた。感染症情報はインターネットで多数発信されているものの、一般市民にとってはどの情報が適切で有意義なものかの判断は困難であることが多い。地方衛生研究所全国協議会などによる共通情報を発信することもひとつの方法であろう。これはインフルエンザのみならず感染症全般で重要である。また、正確な情報を平易な言葉で伝えることを電話相談等市民との直接対話で継続することが、汎流行が発生した際においても社会的混乱を生じさせない礎となると思われる。
NPO法人バイオメディカルサイエンス研究会
山寺静子 小船富美夫 小松俊彦 鈴木一義 中山幹男 萩原敏且 松本美弥子
山本紀一 ルナール純子 大谷 明