2005年8〜9月に発生したハリケーン・カトリーナ後の避難民および救助者における、感染症および皮膚疾患の状況−米国

(Vol.26 p 310-310)

2005年8月29日、ハリケーン・カトリーナがメキシコ湾岸を直撃した。このため約9万平方マイルが被害にあい、約100万人が避難を余儀なくされた。ハリケーン後には少なくとも18州に約750の避難所が設置され、20万人以上が避難した。一般的に、自然災害発生後の環境の変化により、感染症のリスクは高まると考えられる。過去の事例を見ても、被災生存者において皮膚疾患、下痢症、呼吸器感染症が最も多くみられている。州および地元の公衆衛生当局はCDCの協力の下、保健当局者と軍人を含む救助者によるチームで、感染症の強化サーベイランスと集団発生対応を開始した。本レポートではハリケーン直撃から3週間、すなわち地元での有効なサーベイランスが実施されるまでの期間における、感染症および皮膚疾患の状況を報告する。

皮膚疾患Vibrio vulnificus V. parahaemolyticus 感染症が24例報告され、6例が死亡した。また、テキサス州ダラスで小児・成人を含む約30例のMRSA皮膚感染症、ミシシッピ州では軍救助者において、体部白癬や毛嚢炎を伴った種々の皮膚病変が報告された。ルイジアナ州では97例の軍救助者に、ダニ(mite)咬傷と考えられる皮膚疾患が見られた。

下痢症:ルイジアナ州、ミシシッピ州、テネシー州、テキサス州では、下痢症の集団発生が複数報告された。そのうちミシシッピ州およびテキサス州では約1,000人の避難民が下痢と嘔吐を呈し、テキサス州の患者からはノロウイルスが同定された。それ以外に、サルモネラなど複数の細菌が原因菌として報告されたが、細菌性赤痢、腸チフス、毒素産生性コレラ菌01の感染症は報告されなかった。

呼吸器疾患:避難民の間で上気道感染や肺炎が報告されたが、その中で、屋根の上で救助を待っていた2カ月の乳児の百日咳が報告された。適切な抗菌薬予防投与が行われ、接触者追跡では新たな症例はみられなかった。結核に関しては新規患者の発見と、既感染者の治療継続の2方面の対策が実施された。ニューオリンズからフィラデルフィアへ避難してきたホームレス1名が、入所時のスクリーニングで結核と診断された。また、初めに結核が疑われ、その後に他の疾患であることが確定された例が少なくとも8例みられた。ハリケーンの被害が最も大きかった地域には195名の治療中結核患者がみられたが、速やかに地元の公衆衛生局により、治療継続の可否が確認された。その中で、ルイジアナ州の42名の消息がつかめなかったが、41名はこれまでの治療期間や病期などから非伝染性であると考えられた。しかし、再発や耐性化を防ぐためにも治療の完遂が必要であるため、引き続き対応が取られている。

(CDC, MMWR, 54, No.38, 961-964, 2005)

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