鳥インフルエンザA/H7N7のヒト→ヒト感染、2003年−オランダ

(Vol.27 p 48-48:2006年2月号)

2003年2月28日、オランダで初めて家禽から、高病原性鳥インフルエンザウイルスA/H7N7が分離された。その後、RT-PCRによって89名で感染が確認されたが、そのうち78名が結膜炎を発症していた。89名のうち3名は感染が確定された症例の家族で、感染家禽への曝露はなかった。この事実は、ヒト→ヒト感染が起きたことを強く示唆している。この3名はすべて結膜炎を発症しており、1名はインフルエンザ様症状も発症していた。家族内での二次感染を判定し、感染の危険因子を特定するため、感染した従業員の家族を対象に後ろ向きコホート研究を行った。

A/H7N7感染が確定された家族内発端症例に対して、電話で家族の調査への参加を呼びかけた。ただし、飼育場に住んでいる家族や、自宅の庭で家禽を飼育している家族は調査から除外された。「A/H7N7感染が確定された家族内発端症例」とは、2003年2月28日以後にA/H7N7感染家禽への曝露歴があり、結膜炎および(または)インフルエンザ様症状を発症し、PCR および(または)ウイルス分離の結果が陽性であった者である。また抗体陽性については、赤血球凝集抑制試験によるA/H7N7抗体価が10倍以上の場合とした。規格化された自己記入式の質問票の郵送により、個々の参加者の情報を収集し、家族内発端症例の診断後、少なくとも3週間以上経過してから、すべての参加者に血清検体の提出を求めた。

A/H7N7感染が確定された発端症例25名の家族、62名が調査対象となった。男女比は2:3、平均年齢は27.3歳(0〜61歳)であった。8名(13%)が症状を訴えたが、うち2名は結膜炎のみ、4名はインフルエンザ様症状のみ、2名は両方であった。62名中56名が血液検体の提供に同意し、うち33名(59%)でH7抗体が検出された。症状を訴えた8名のなかでは5名が血清検査を受けたが、4名(80%)で抗体が検出された。

これらの結果は、この鳥インフルエンザA/H7N7の流行において、飼育場の従業員の家族は鳥インフルエンザに感染するリスクが高かったことを示唆している。

家族におけるH7抗体陽性の有意な危険因子は、「自宅に少なくとも2つ以上トイレがある」:RR= 3.8、「家の中でペットの鳥を飼っている」:RR= 1.9、「(使い捨ての紙のハンカチではなく)布のハンカチを使用している」:RR= 1.7であった。

「自宅に少なくとも2つ以上トイレがある」場合に抗体陽性率が有意に高かったことについては、特別な説明はできなかった。また、「家の中でペットの鳥を飼っている」場合に有意に高かったことについては、該当するのは抗体陽性者33名中7名のみで、そのうち6名が同一家族であったことも考慮する必要がある。結膜炎を発症している家族内発端症例が「布のハンカチを使用している」ことは、実際に家族の感染リスクを高めた可能性がある。

今回H7抗体が検出されたことが、ヒトへの(無症候)感染を示すと考えると、家族への二次感染の拡がりは予想以上に大きな規模であったことになる。確定例の家族の臨床症状のみをモニターすると、ヒト→ヒト感染の拡がりを過小評価することになる。今後、H7抗体陽性無症状者との接触者についての調査や、家族以外の接触者を対象とする調査を行う必要がある。

(Eurosurveillance Monthly, 10, Issue 12, 2005)

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