2004〜2005年にノースカロライナ、フロリダ、アリゾナ州で開催された農業祭、動物ふれあいコーナーの訪問者において、大腸菌O157:H7による3件の集団発生が起きた。ノースカロライナ州では15名の溶血性尿毒症症候群(HUS)を含む108名の患者、フロリダ州では7名のHUS を含む63名の患者、アリゾナ州では2名の患者が報告された。
ノースカロライナ州:2004年10月29日にノースカロライナ州の保健局は、ノースカロライナ州祭の動物ふれあいコーナーを訪れた者で、HUS患者3名の集積の報告を受けた。この祭は10月15〜24日に開催され、2カ所の動物ふれあいコーナーがあった。下痢症のサーベイランスが強化され、祭り参加後に発症し、他の原因がない者108名が見出された。82名(78%)は動物ふれあいコーナーを訪れており、年齢中央値5歳(1〜61歳)、64名(59%)が女性であった。41名から志賀毒素産生性大腸菌が検出され、そのうち38名では、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンが区別つかない大腸菌O157:H7であった。また、15名(14%)がHUSと診断された。環境サンプリング検査では、2カ所のふれあいコーナーのうち1カ所で広範な大腸菌O157:H7 による環境汚染が確認され、菌株のPFGEパターンは患者菌株の主要パターンと一致した。症例対照研究が行われ、汚染された動物ふれあいコーナーを訪問したことの調整オッズ比は、8.2(CI= 3.6〜18.9)であった。このコーナーには約100頭の羊とヤギがおり、訪問者と接触があった。症例(中央値20分)は対照(15分)よりも長くコーナーに滞在していた(p=0.04)。6歳未満のコーナー訪問者の中では、“肥やし”との接触(OR=6.9; CI=2.2〜21.9)、地面に倒れこんだり座ったりすること(OR=3.2; CI=1.1〜9.1)、おしゃぶりや赤ちゃん用コップの使用、または親指をくわえること(OR=11.0; CI=2.0〜55)が罹患と関連していた。アルコール含有手指消毒剤の使用は罹患を抑えることに関係しなかったが(OR=1.9; CI=0.3〜10.2)、同伴の大人が動物との接触が危険だと認識していたことは、罹患を抑えることに関係していた(OR=0.1; CI= 0.03〜 0.5)。
フロリダ州:2005年3月にフロリダ保健当局は、2005年2月10〜21日と3月3〜13日に開催されたフロリダ祭参加者において、7名のHUS患者を含む22名の大腸菌O157:H7の集団発生が起こったことを確認した。初期に行われた患者のインタビューで、動物ふれあいコーナーに参加したことが共通する曝露であると判明した。24名の患者と6頭の動物の糞、および環境サンプリング20検体から、PFGEパターンが同一の大腸菌O157:H7が検出された。大腸菌O157:H7感染が疑われる症例の報告を求めるサーベイランスの強化により、63名の患者が見出された。年齢中央値は4歳(1〜63歳)で、35名(56%)が女性であった。7名(11%)がHUSと診断された。34名(54%)の患者は牛、羊またはヤギとの接触があり、20名(32%)は餌をあげていた。症例対照研究では動物との直接的接触(OR=4.2; CI=1.7〜10.5)、間接的接触(OR=3.3; CI=1.4〜7.8)が罹患と正の関連があった。
アリゾナ州:2005年7月にアリゾナ州保健当局に、同一のPFGEパターンを有する大腸菌O157:H7感染症の2名の子供が報告された。2名とも、動物ふれあいコーナーを有するアリゾナの動物園を訪れていた。1名は動物ふれあいコーナーで、動物と直接的な接触をしていた。他の1名は、動物ふれあいコーナーの手すりとの接触の可能性があっただけであった。また2名とも、動物ふれあいコーナーのすぐそばの坂道で遊んでいた。動物ふれあいコーナーの動物の糞から、患者と同一のPFGEパターンの大腸菌O157:H7が検出された。
最近、これらの動物ふれあいコーナー関連大腸菌O157:H7集団発生が起きていることは、このような祭りにおける感染を減らし、同様な集団発生を予防するための対策を強化する必要性を示すものである。
(CDC, MMWR, 54, No.50, 1277-1280, 2005)