The Topic of This Month Vol.27 No.5(No.315)

HIV/AIDS 2005年

(Vol.27 p 115-116:2006年5月号)

エイズ発生動向調査は1984年に開始され、1989年〜1999年3月までは「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)」に基づいて実施されていた。1999年4月からは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づく感染症発生動向調査として行われてきたが、2003年11月の感染症法改正で全数把握の5類感染症となった(報告基準はhttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/kansensyo/51.html参照)。本特集のHIV感染者(AIDS未発症者)数とAIDS患者数はエイズ動向委員会による2005(平成17)年年報(2006年2月27日確定)による。なお、同年報は厚生労働省疾病対策課より公表されている(http://api-net.jfap.or.jp/mhw/survey/05nenpo/nenpo_menu.htm)。

1.1985〜2005年までのHIV/AIDS報告数の推移:2005年に新たに報告されたHIV感染者は832(男769、女63)で、2004年(780)を上回り過去最高であった。AIDS患者は367(男340、女27)で、2004年(385)より減少した(図1)。国籍・性別では日本国籍男性がHIV感染者全体の85%(2003年、2004年ともに82%)、AIDS患者全体の79%(2003年、2004年ともに75%)を占めている。

1985年〜2005年12月31日までの累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)はHIV感染者7,392(男5,661、女1,731)、AIDS患者3,644(男3,171、女473)で、人口10万対ではHIV感染者5.789、AIDS患者2.854となった。なおこの他に「血液凝固異常症全国調査」において血液凝固因子製剤によるHIV感染者1,435(生存中のAIDS患者167および死亡者579を含む)が報告されている(2004年5月31日現在)。

2005年中に任意の病変報告(生存→死亡)により厚生労働省疾病対策課に報告された死亡例は日本国籍例4(男4、女0)、外国国籍例1(男1、女0)、計5であった。

国籍・性別:HIV感染者では日本国籍男性が増加し続けており(図2)、2005年は709(2004年は636)とさらに増加した。一方、日本国籍女性は減少(44→32)、外国国籍男性・女性も微減した(図2)。AIDS患者では日本国籍男性が291と、2004年(290)とほぼ同数が報告された。

感染経路と年齢分布:2005年は日本国籍男性の同性間性的接触(両性間性的接触を含む)による感染がHIV感染者では514(2004年は449)と過去最高を更新し、AIDS患者では129(2004年は126)であった(図3)。日本国籍男性の同性間性的接触によるHIV感染者は、15〜24歳では80%(図4-a)、25〜34歳では76%(図4-b)、35〜49歳では68%(図4-c)を占め、各年齢群で増加している。特に25〜39歳での増加が大きい。一方、50歳以上の男性は、他の年齢群に比べ異性間性的接触による者の割合が大きい(図4-d)。日本国籍女性はほとんどが異性間性的接触による感染であり、25〜34歳が多い。静注薬物濫用や母子感染によるものはHIV感染者、AIDS患者いずれも1%以下であり、諸外国に比べわが国は少ない。2005年には静注薬物濫用よる感染は10(HIV感染者3、AIDS患者7)、母子感染例は1(HIV感染者1、AIDS患者0)が報告された。

推定感染地域:2005年には国内での感染がHIV感染者の83%、AIDS患者の69%を占めた。2001年以降、外国国籍男性においても国外感染より国内感染の方が多くなっている。

報告地:診断した医師が届出をした都道府県別にみると、2005年のHIV感染者の報告数は、多い順に東京、大阪、愛知、神奈川、静岡、埼玉、千葉、福岡、兵庫、北海道、沖縄、広島、茨城、栃木、三重で、これら15都道府県が10を超えている(2004年は13都府県)。関東・甲信越以外の6つのブロックは2004年に引き続いて2005年も増加しており、地域拡散傾向が示されている。

2.献血者のHIV抗体陽性率:献血者のHIV抗体陽性率は2004年まで年々増加を続けていたが、2005年は献血件数5,320,602中78(男75、女3)の陽性者がみられ、献血10万件当たり1.466(男2.279、女 0.148)と、2004年(1.681)を下回った(図5)。献血血液のHIV抗体陽性率÷人口当たりのHIV感染率の比が西欧諸国に比べて非常に大きい(IASR 21: 140-141, 2000参照)という傾向には変わりがない。

3.保健所におけるHIV抗体検査と相談:自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は2004年89,004件→2005年100,287件と増加し、1993年以来12年ぶりに10万件を超えた(図6)。同検査による陽性件数は331(0.33%)にのぼっているが、このうち保健所での検査80,899件中の陽性181件(0.22%)に対し、自治体が実施する保健所以外の検査19,388件中の陽性150件(0.77%)と、保健所以外での検査による陽性率が高いことが注目される(本号4ページ参照)。相談受付件数も2004年146,585件→2005年161,474件と増加し、過去10年間では1996年(172,641件)に次ぐ件数であった。

まとめ:2005年のHIV/AIDS報告数は2004年に引き続いて1,000を超えている。また、HIV感染者、AIDS患者の累積報告数は6年前の1999年末(HIV感染者数3,466、AIDS患者数1,587)の2倍以上となっており、2倍に増加するまでの年数が短くなっている(2004年末時点の累積報告数はその7年前の2倍であった)。2004年に引き続き2005年も男性での同性間性的接触による感染の増加が目立つ。今後の対策として、特に男性の同性間・異性間性的接触による感染を中心とした若年層のHIV感染に対して、積極的な予防施策が必要である(本号3ページ参照)。

これまで各方面で予防対策が講じられているが、増加傾向には歯止めがかかっていない。「エイズ予防指針」が改正され、2006年4月1日から適用された(http://api-net.jfap.or.jp/mhw/document/doc_01_89.htmhttp://api-net.jfap.or.jp/mhw/document/doc_01_0331001_2.htm)。これを踏まえ、各地域において、利便性に配慮した検査・相談事業を一層推進するとともに、地域の実情に応じて対象者を明確化して重点的な普及啓発等を推進し、HIV感染の予防および早期発見、早期治療と感染拡大の抑制に努める必要がある。

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