料理店を原因施設とするSalmonella Litchfieldによる集団食中毒事例−新潟県

(Vol.27 p 201-201:2006年8月号)

2005年9月、県南部のJ市にあるH料理店において提供された食事を原因とするSalmonella Litchfieldによる集団食中毒が発生したので、その概要を報告する。

9月12日午後5時頃、H料理店で会食した人が下痢、腹痛等の食中毒症状を呈している旨、患者の関係者から保健所に届出があった。

調査の結果、同施設を9月10日に利用した1グループ54人のうち、18人が11日午前3時頃〜翌日の午後7時頃にかけて、下痢、腹痛、発熱等の食中毒症状を呈していることが判明した。有症者全員に共通する食事が同施設で提供された会食料理に限られていることと、医師から食中毒の届出がなされたことから、同施設で提供された食事を原因とする集団食中毒が疑われた。

患者の発症ピークはに示したとおり摂食後17〜20時間で、平均潜伏時間は約25時間であった。患者18名の各症状の発現率は17〜100%で内訳をに示した。

同施設の使用水は上水道で、9月11日の立ち入り時には0.2ppmの残留塩素が認められた。また、従業員は定期的に検便を実施しており、健康管理上の不備は確認されず、事件発生前後の健康状態も良好であった。しかし、施設の衛生管理および食品の取り扱い状況に多くの問題点が見受けられた。特に、調理室内のシンクや調理台が汚染される可能性がある場所に半地下の水槽があり、食用蛙が飼育されていた。また、調理器具の適切な使い分けや消毒が実施されておらず、調理室内の清掃や整理整頓も行き届いていなかった。

患者便13検体について食中毒菌の分離を試み、それとともに汚染源を特定するため、設備や器具のふきとり6検体、食品の残品4検体、調理従事者便9検体の他、飼育されていた食用蛙の腸管内容物3検体、飼育水槽の水1検体、および料理に鯉の煮物があったことから鯉を飼育している屋外の池の水1検体について細菌学的検査を実施した。その結果、患者便8検体からS . Litchfieldが検出され、その他の検体からは食中毒菌は検出されなかった。また、ウイルス検査は患者便13検体についてノロウイルスの検査を実施したが、検出されなかった。

本事例では、患者全員に共通する食事が同施設が提供した食事に限られていたが、摂取状況調査(χ2検定)や細菌学的検査結果からはサルモネラ食中毒に至った原因を解明することはできなかった。しかし、ベテランの営業者にもかかわらず、基本的な衛生管理が実施されておらず、このことが食中毒につながったものと推定され、同施設を原因施設とするS . Litchfieldによる集団食中毒と断定した。

新潟県保健環境科学研究所 佐々木寿子
新潟県上越地域振興局健康福祉環境部 渡辺和伸 岡尾勇一

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