Salmonella Bareillyによる食中毒事例−大分県

(Vol.27 p 202-203:2006年8月号)

2005年10月に別府県民保健福祉センター管内の旅館で和食会席料理を原因とするSalmonella Bareillyによる食中毒が発生したのでその概要を報告する。

2005年10月17日の18時20分頃、愛媛県保健福祉部薬務衛生課から大分県に「大分県内を観光旅行し、別府市内のA旅館に宿泊した愛媛県在住の5名中4名が下痢、発熱、腹痛等の食中毒様症状を呈している。」旨の通報があり、当該県民保健福祉センターでの調査の結果、10月15日の夜にA旅館で食事を摂った30グループ133名中16グループ42名が有症状であると判明した。有症者の共通食はA旅館の食事以外にはないことから、A旅館を原因施設とする食中毒と推定された。

患者の主な症状は、下痢(42名:水様性、平均11.5回)、発熱(35名:平均38.4℃)、腹痛(30名)で、他に嘔吐(7名)、胸やけ(6名)であった。潜伏時間は14時間〜47.5時間で、平均は27.4時間であった。提供された食事の内容は、15日の夕食が蒸し物、陶板焼き、刺身(ヒラメ、カンパチ、アジ、マグロ、イカ)、前菜、茶巾、南京豆腐、ナスのアナゴ巻き、フルーツ・メロンなど、16日の朝食が彩り豆腐、温泉卵、じゃこ、佃煮、アサリの味噌汁などであった。

調査の発端となった愛媛県内の医療機関を受診した患者便からはサルモネラ属菌O7群が検出されており、県内外に在住する有症者の検便を関係自治体に依頼した結果、福岡県内、宮崎県内、大分市内などに在住する患者便からもサルモネラ属菌O7群が検出された。これらの分離株は、血清型別によりS . Bareilly(O7: y: 1,5)と型別された。

原因究明のため、検食(15日の夕食12品と16日の朝食7品)19検体、調理従事者便7検体、施設のふきとり6検体を対象にサルモネラ属菌の検査を行った。その結果、15日夕食の刺身、前菜からS . Bareillyが検出され、その汚染菌数は30〜60cfu/gと推定された。また、調理従事者1名からもS . Bareillyが検出された。

患者便、食品、調理従事者便から検出されたS . Bareillyが同一起源由来であるかどうかを確認するために、制限酵素Xba IおよびBln Iを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子多型解析を行った。その結果、に示すように、本事例由来株はすべて同じPFGEパターンを示したことから、これらは同一起源に由来するものと考えられた。

患者便、調理従事者便、食品残品からS . Bareillyが検出されたこと、これらの分離株がすべて同じPFGEパターンを示したこと、有症者の共通食がA旅館による食事以外にないことなどから、本事例はA旅館を原因施設とするS . Bareillyによる食中毒と断定された。S . Bareillyは複数の調理加工品から検出されており、食品への汚染経路としては、調理従事者の手指や調理器具を介した二次汚染が推察された。

大分県衛生環境研究センター 緒方喜久代 鷲見悦子 長谷川昭生 渕 祐一
大分県別府県民保健福祉センター

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