解析の対象は、鳥インフルエンザA/H5N1として実験室診断されたヒト症例で、発症日が2003年12月1日〜2006年4月30日として、WHOのウエブサイトに報告されたものすべてである。そこには205例報告されているが、接触者調査の過程で明らかとなったベトナムにおける2例の無症状者を除いて、203例を解析した。対象例はすべて、呼吸器検体の一つ以上を用いたPCR法で、および/または血清検体を用いたマイクロ中和試験で確定されている。元のデータはサーベイランスを目的に集められたため、その質、信頼性、様式が国によって異なっていた。なお、曝露に関するデータは現時点で不完全であるため、今回は解析を行わなかった。
鳥における流行が地理的に拡がったことに伴い、ヒト症例が報告された国の数は、2005年中頃までは4カ国であったが、その後は9カ国に増加した。発症時期でみると、1年を通して発生していたが、毎年、おおむね北半球の冬〜春の時期にピークが認められた。症例の年齢中央値は20歳(3カ月〜75歳)であり、半数は20歳未満、90%は40歳未満であった。男女比は全体で0.9であったが、年齢群により異なり、10〜19歳、20〜29歳の群では0.6〜0.7、10歳未満の群では1.5であった。
発症から入院までの期間の中央値は、全体では4日(0〜18日)であり、年別では2004年は5日、2005年は4日、2006年は5日であった。致死率については、全体では56%であったが、年齢群別では10〜19歳で73%と最も高く、50歳以上で18%と最も低く、通常のインフルエンザとは異なっていた。また年別では、2004年が73%、2005年が43%、2006年が現在まで63%であった。発症から死亡までの期間の中央値は、全体では9日(2〜31日)であったが、年別では2004年は11日、2005年、2006年はともに8日であった。
本疾患の性格をより詳細に明らかにし、患者管理を改善させるための問題点として、必須な情報の収集において国によりばらつきがある点が浮かび上がった。
(WHO、WER、81、No.26、249-257、2006)