オランダにおけるライム病:過去10年間における開業医受診、および入院患者数の顕著な増加、1994〜2005年

(Vol.27 p 205-205:2006年8月号)

ライム病はオランダでは届出疾患になっていない。そのため、ダニ刺咬、遊走性紅斑、ライム病の入院患者について全国での発生状況をみるために、後ろ向き研究が行われた。1995年、2002年、2006年に全国すべての開業医を対象に、前年に診察したダニ刺咬、遊走性紅斑患者について、郵送による質問票調査を行った。また、オランダのほとんどすべての病院をカバーする国の医療登録データベースから、ICD-9による疾患コードを用いて、年ごとのライム病による入院患者数を調べた。ICD-9ではライム病はレプトスピラ症などとともに、「その他のスピロヘータ感染症」に含まれるが、このカテゴリーのほとんどはライム病である。

質問票調査の回答によると、遊走性紅斑による受診は人口10万人当たりの推定で、1994年の39人から、2001年は74人と2倍、2005年は103人と3倍になった。ダニ刺咬による受診は人口10万人当たり、1994年の191人から2001年の372人、2005年の446人へと増加を続けている。

ダニ刺咬、遊走性紅斑の増加が最大であった地域は、南部、北東部、西側沿岸部の数カ所であった。入院患者数の地理的分布は、ダニ刺咬、遊走性紅斑による受診の分布と一致した。ライム病による年間の推定入院患者数は、1994年の170人から2001年の229人、2002年の228人、2003年の331人、2004年の411人、2005年の435人と増加し、2002〜2004年にかけて最大の増加がみられた。

近年の入院患者数の増加が、ライム病の発生が本当に倍増したことをあらわしているかどうかについては明らかでない。なぜならば、2003年の半ばにライム病の診断と治療に関する新しいガイドラインが出され、そこでは重症例に対して抗菌薬の経静脈的投与を推奨しているが、通常それは入院して行われるからである。近々、生態学的リスク因子、および野外レクリエーションの役割と、地域ごとおよび年ごとでのそれらの違いについての解析が始まる予定である。

オランダでは、ライム病の保健問題としての重要性は大きくなりつつあると考えられる。2000〜2004年にオランダで行われた別の研究によると、収集されたダニにおけるBorrelia burgdorferi sensu latoの保有率は、0.8〜11%であった(年ごとに、また植生の型により異なる)。

ライム病の重篤性、診断および治療についての知識向上のため、今回の質問票調査の結果はすべての開業医に伝えられた。また、ダニとライム病についての新しいパンフレットのお知らせとともに、自治体の保健部局にも伝えられた。2002年と2006年には、遊走性紅斑患者の増加について一般市民に注意喚起のための報道発表を行い、メディアの大きな注目を集めた。

(Eurosurveillance Weekly 11, 22 June, 2006)

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