1981年6月、MMWR誌上に、後に後天性免疫不全症候群(AIDS)と呼ばれることになる米国での最初の症例が報告された。それ以降、米国においては感染が拡がり続けており、2003年末時点ではHIV/AIDS症例が1,039,000〜1,185,000人と推定されており、そのうち自分の感染を知らない人が24〜27%と推定されている。
2004年末の時点で、HIVあるいはAIDSと診断され、CDCに報告されたのは1,147,697人と推定されている。AIDS症例は1980年代に急激に増加し、1992年にピークを迎え(推定で78,000人が診断)、1998年以降はほぼ一定して毎年約40,000人となっている。1992年から1998年には47%減少しているが、デモグラフィー別、感染経路別にみてすべてのカテゴリーで減少がみられた。AIDS症例のほとんどは常に男性であるが、女性の占める割合が1981〜1995年の15%から、2001〜2004年の27%に増加している。年齢群別では、13歳未満の占める割合が1981〜1995年の1.4%から、2001〜2004年の0.2%に減少している。
AIDS症例を人種・民族別にみると、1981〜1995年には非ヒスパニック系白人が47%で最も目立ったが、2001〜2004年には非ヒスパニック系黒人が50%、ヒスパニック系が20%となった。このように、人種・民族的少数派への偏りが顕著となっている。感染経路別では、ハイリスクな異性間性的接触の占める割合が1981〜1995年の10%から、2001〜2004年の30%に増加している。
2001〜2004年におけるHIV/AIDS症例については、35の地域(33の州とグアム、ヴァージン諸島)から推定で157,468人がCDCに報告されたが、年別では2001年の41,270人から2004年の38,730人に減少している。このうち51%が黒人であった。2004年における人口10万人当たりのHIV/AIDSの推定発生率は、黒人が76.3人、ヒスパニック系が29.5人であり、白人の9.0人と比べ、それぞれ8.5倍、3.3倍となっている。これを性別でみると、黒人男性は131.6人で白人男性18.7人の7倍、黒人女性は67.0人で白人女性の3.2人の21倍である。2001〜2004年のHIV/AIDS症例のうち、感染経路として最も多かったのは男性間性的接触(44%)で、次いで異性間性的接触(34%)、静注薬物使用(17%)であり、周産期感染は0.6%であった。
AIDS症例での死亡は、1981〜2004年に522,723人がCDCに報告されている。AIDSと診断されてからの生存状況は実質的に改善しており、特に1996年以降に顕著である。診断後2年生存率では、1981〜1992年診断例では44%であったが、1993〜1995年は64%、1996〜2000年は85%となっている。人種・民族別では、1996〜2003年のAIDS診断例における診断後1年以上生存率は、黒人、アメリカインディアン/アラスカネイティブに比べて、アジア/太平洋諸島系、白人、ヒスパニック系で高かった。
(CDC、MMWR、55、No.21、589-592、2006)