宮崎県内の感染症発生動向調査事業における1997年以降のウイルス検出統計では、1998年(分離株数12株)、1999年(同4株)、2000年(同8株)、2001年(同49株)にエコーウイルス18型(E18)が分離されている。その後、2005年に5株が分離され、2006年第13週〜第27週には、発疹および無菌性髄膜炎に関する検査依頼がそれぞれ53検体および30検体あり、そのうち35検体(発疹を呈した患者20名、髄膜炎を呈した患者7名、発疹と髄膜炎の両方を呈した患者1名、その他3名)からE18が分離された。
35検体のうち26検体は咽頭ぬぐい液、8検体は髄液、1検体は便であった。ウイルス分離にはCaCo-2、RD-18S、HEp-2、Veroの4種類の細胞を用い、CaCo-2細胞とRD-18S細胞でCPEが観察され、市販の抗血清を用いた中和反応で同定を行った。
31名の患者の主な症状は、発熱が30例、発疹(丘疹、紅斑)が21例、髄膜炎が8例、上気道炎が4例、胃腸炎(下痢)が2例であった。発疹を呈した20名の患者の年齢は0歳〜6歳(平均1.5歳)で、無菌性髄膜炎を呈した患者の年齢は、3歳、5歳(2名)、6歳(2名)、8歳、11歳の平均6.3歳であった。また、発疹と無菌性髄膜炎の両方を呈した患者1名の年齢は1歳であった。
E18は、1987〜1988年に35都府県市から検出され、1989年2月号の病原微生物情報の<特集>でE18の流行が報告1)されている。今年は、北九州市(IASR 27: 153, 2006)や大分県からの報告(本号14ページ参照)があり、今年の春〜夏季の発疹や無菌性髄膜炎の主要な原因ウイルスであると思われる。E18感染症の主な臨床症状は、低年齢(0〜2歳)では発疹、年長児では無菌性髄膜炎が多い傾向がある。過去に同様な報告2-4)があり、抗体保有状況と年齢が主な要因と考えられている。
文 献
1)国立予防衛生研究所, 病原微生物検出情報 10(2): 21&44, 1989
2)佐藤宏康等, 臨床とウイルス 17(1): 84-88, 1989
3)河原信彦等, 臨床とウイルス 18(2): 230-234, 1990
4)栄 賢司, 感染症誌 66(12): 1670-1681, 1992
宮崎県衛生環境研究所
岩切 章 三浦美穂 山本正悟 井料田一徳 若松英雄