2005/06シーズン夏季のインフルエンザの流行−沖縄県

(Vol.27 p 304-305:2006年11月号)

沖縄県では、2004/05シーズン夏季に注意報レベルを超えるインフルエンザの流行を初めて経験した(IASR 26: 243-244, 2005)。さらに、2005/06シーズンの夏季にもインフルエンザが流行し、昨年とは異なる患者発生およびウイルス分離状況が観察されたので報告する。

患者発生状況:2005/06シーズンの定点当たり患者報告数を図1に示した。患者数は、第51週(12/19〜12/25)に定点当たり3.7人と増加し、第7週(2/13〜2/19)には17.5人となり、全国と比べ3週遅れてピークに達した。その後、患者数は減少し終息したかに思われたが、第19週(5/8 〜5/14)から定点当たり2.2人と患者数が再び増加し、第22週(5/29〜6/4)には12.6人と、注意報発令基準である10人を上回った。患者数はその後も増加し、第24週(6/12〜6/18)の25.0人でピークとなり、冬季のピークを上回った。注意報発令は第27週(7/3〜7/9)まで続き、第32週(8/7 〜8/13)にようやく1.0人以下となり終息した。5〜8月の患者の年齢別発生割合は、5〜14歳で全体の約6割を占めた(図2)。この夏季の流行で県内の小中学校13校17クラスが学級閉鎖となった。

ウイルス分離状況:病原体定点等の医療機関で患者から採取された咽頭ぬぐい液等を検査材料とし、MDCK細胞を用いてウイルス分離を行った。分離されたウイルス株は、国立感染症研究所から配布された2005/06シーズン用インフルエンザサーベイランスキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%のモルモット赤血球液を使用)により、型別同定および抗原解析を行った。

2005/06シーズンのウイルス分離状況を図3に示した。最初のウイルス分離例は、2005年10〜11月に集団発生例でAH3亜型が7例分離された(IASR 27: 45-46, 2006)。さらに、2006年1〜2月の流行時においてもAH3亜型のみが19例分離され、冬季の流行はAH3亜型が主流であった。しかし、5〜8月はB型が21例、AH1亜型が7例分離され、夏季の流行はB型とAH1亜型(3:1)の混合流行であった。

抗原解析の結果、AH1亜型分離株は、抗A/New Caledonia/20/99(ホモ価320)に対してHI価40〜320、AH3亜型分離株は、抗A/New York/55/2004(ホモ価640)に対してHI価320〜1,280を示した。B型分離株は、Victoria系統の抗B/Brisbane/32/2002(ホモ価1,280)に対してHI価1,280〜2,560を示した。

考察:2005/06シーズンの夏季インフルエンザ流行の始まりは昨年と比べ約1カ月早く、流行のピークは昨年の夏季および同シーズンの冬季を上回った。また、患者の年齢別発生割合は5〜14歳の年齢群で6割を占めたのが特徴的であった。さらに、夏季の流行株は、昨年のAH3亜型とは異なるVictoria系統のB型とAH1亜型であった。

わが国のインフルエンザの流行は、一般的に冬季に流行し夏季には流行しないと考えられている。しかし、本県では2年連続で夏季にインフルエンザが注意報レベルを超えて流行した。このため流行のピークは冬季と夏季の2回観察されるようになり、インフルエンザの流行パターンが変化していることが示唆された。

インフルエンザの流行は、ウイルス、人(宿主)、環境の3つの要因が複雑に絡み合って起こると考えられている。しかし、夏季にインフルエンザが流行した理由については、現在のところ解明されていない。本県では2年連続で夏季にインフルエンザが流行しており、今後も夏季に流行する可能性は十分にあると考えられる。したがって、インフルエンザは冬にだけ流行するという認識を改め、年間を通して監視をすることが重要と思われた。

沖縄県衛生環境研究所
平良勝也 仁平 稔 大野 惇 糸数清正 岡野 祥
沖縄県感染症情報センター 嘉数保明
沖縄県福祉保健部健康増進課 新垣美智子 田盛広三

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