“髄膜炎ベルト”として知られるサハラ以南アフリカの21カ国では、髄膜炎菌性髄膜炎の流行度が非常に高く、乾期(12〜6月)に大規模な流行を繰り返している。過去20年間には100万人以上が罹患し、9万人近くが死亡している。2006年10月17〜19日にマリのバマコで、本疾患の強化サーベイランスと流行への対応に関する各国間会議が開催された。以下に、その会議での主な内容を要約する。
・直近の大規模な流行は2001年に終息したが、それ以降、髄膜炎ベルトにおける流行性髄膜炎の発生は減少し、2005年には過去20年間で最低レベルにまで下がった。しかし2006年には急増し、疫学週第1〜39週の期間に15カ国から37,855例の報告があり、うち死亡例は3,215例であった。流行は、2005年には5カ国の16地域から報告があったのみであったが、2006年には11カ国の 101地域から報告された。最も流行が大きかったのはブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、スーダンであった。
・2005〜2006年の流行期で最も多かった原因菌は髄膜炎菌であり、髄液検体陽性例のうち78%で確定された。次いで肺炎球菌が13%、インフルエンザ菌b型が6%であった。髄膜炎菌では引き続きA群が最も多く、全体の65%を占めた。W135群の割合は3%であり、過去3年間の数値よりも低かった。X群はこれまでは散発的にみられたのみであったが、ニジェールでは2006年に最も多い型で、全体の51%を占めた。X群に対するワクチンはないため、注意深く監視を行っていく必要がある。髄膜炎菌ではクロラムフェニコール、あるいはセフトリアキソン耐性はみられなかった。肺炎球菌では約20%にクロラムフェニコール耐性がみられたが、セフトリアキソン耐性はみられなかった。
・2006年の髄膜炎流行期には、2価ACワクチンの製造上の問題によりワクチン不足が生じたが、髄膜炎ベルトの11カ国で700万人以上にワクチン接種が行われた。
・2007〜2008年での髄膜炎のコントロールにおける最大の問題は、ワクチン入手の可能性である。この期間に流行の程度は増大すると予想されるが、2価および3価多糖体ワクチンの供給は不十分であることが予想される。WHO のリスク分析によると、この期間のワクチン必要量は8,000万回分になる可能性がある。しかし、入手可能な多糖体ワクチンは2価のACワクチンで 3,000万回分、3価のACWワクチンで300万回分と推定され、約5,000万回分が不足する可能性がある。
(WHO, WER, 82, No.5, 34-40, 2007)