ワクチンの安全性に関する諮問委員会、2006年11月

(Vol.28 p 90-91:2007年3月号)

2006年11月29〜30日、スイスのジュネーブで、「ワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)」の第15回会議が開催された。主な内容は以下の通りである。

・ワクチン添加物に関しては限られた情報しか得られていない。ワクチン接種が頻繁に行われるわけではないので、少量の添加物が毒性を発揮する可能性は低いが、治療的ワクチンが開発されると、繰り返し接種されることにもなりかねないので、事情は変わる可能性がある。

・青年に対するワクチン接種の安全性への関心が高まっているが、他の原因による様々な病態が、偶然ワクチン接種の時期と同じ頃におこる可能性もあり、特定の疾患についての確実な集団特異的あるいは年齢特異的なベースライン値(例えば、自己免疫疾患の率)を把握するよう務めるべきである。

・占部株とレニングラード・ザグレブ株のムンプスワクチンを含むMMRワクチンの接種キャンペーンは、副反応としての無菌性髄膜炎の増加により、大きな影響を受けた。今回の会議の時点では、報告されたワクチン由来ムンプス髄膜炎の症例はすべて回復しており、これらの何例かは検査診断されていたが、症状はなかったか、あってもごくわずかであった。

・アルゼンチンおよび南アフリカでの後方視的研究の結果、後にAIDSを発症することになるHIV感染児が出生時にBCG接種を受けた場合、播種性BCG病を生じるリスクが高くなることが確認された。HIV感染児におけるBCGの結核予防効果は不明であり、接種による播種性結核発症のリスク増加の方が、重症結核の予防効果を上回る可能性がある。HIV感染が分かっている小児に対しては、BCG接種を行うべきではないと結論した。

・4価結合型髄膜炎菌ワクチン(Menactra®)でギラン-バレー症候群(GBS)の発生がわずかに増加する可能性はあるが、報告システムの限界、GBS発生のベースライン値が不確実であることから、そのデータの解釈には注意が必要である。

・パンデミックインフルエンザワクチンの安全性に関して、国際的にモニターする計画を話しあった。情報を共有し、また通常のインフルエンザワクチン接種の時期にパイロット試験を行うために、窓口機関を組織した強固なネットワークを作る必要性が強調された。

・2006年夏にインドの4州で、弱毒生日本脳炎ワクチン(SA 14-14-2)を使用したワクチン接種キャンペーンが行われ、1〜15歳の930万人以上に接種されている。重症な有害事象の報告は65例で、うち22例は死亡しているが、それらのほとんどはワクチンとは無関係と思われた。重症な有害事象の報告数は対象人口に対して少ないと思われ、ワクチン接種との関連は考えにくい。

・肺炎球菌結合型ワクチンの安全性に関して、62件の研究結果を含めて検討を行ったが、反応性の気道障害は必ずみられるものでもなかった。7価結合型ワクチンは2000年に承認され、米国、カナダ、ヨーロッパ数カ国で広く使われてきたが、それ以降、安全上の大きな問題はみつかっていない。

(WHO, WER, 82, No.3, 18-24, 2007)

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