2007年、三重県において、手足口病の定点当たりの患者届出数は第1週〜第9週まで0.2〜0.6であり、2005、2006年とほぼ同水準で推移している。
この期間に手足口病患者検体として当研究部には咽頭ぬぐい液6検体(四日市1検体、鈴鹿5検体)が搬入され、これらについて山崎らの報告(山崎ら、感染症学雑誌 75: 909-915, 2001)に基づきRT-PCR法によりコクサッキーウイルスA16型(CA16)、エンテロウイルス71型(EV71)を検索した。さらに、これら検体についてVero9013細胞を用いウイルス分離を実施した。
結果、6検体すべてからCA16遺伝子およびエンテロウイルス遺伝子が検出され、うち4検体はVero9013細胞に対し明瞭なCPEを示した。分離されたウイルスに対し抗CA16血清(20単位)を用い中和試験を実施したところ、4検体すべてが中和されなかった(表1)。RT-PCR法の結果を加味すると、CA16の難中和株と考えられるため、現在遺伝子配列の解析等、追加試験を実施中である。
例年、手足口病は第20週前後より増加傾向にあり、今後患者数および検体搬入数の増加が予想される。今回の事例のような既存血清で中和されにくい株に対しては、RT-PCR法と遺伝子配列解析を併用し、対応していく必要があると考えられた。
三重県科学技術振興センター保健環境研究部 赤地重宏 山内昭則 永田克行