新潟県におけるアストロウイルスによる胃腸炎の発生

(Vol.28 p 296-296:2007年10月号)

2007(平成19)年2月〜5月にかけて、新潟県下越地域の新発田市と新潟市、ならびに佐渡市の3つの病院の病原体サーベイランスで、アストロウイルスの検出事例が相次ぎ、13名の陽性患者が集積したので報告する。

検出患者の年齢は、1歳以下が8例で、うち6カ月齢以下は4名、最高は3歳5カ月齢と、文献にあるように患者の年齢層は低かった。症状の発現率は、下痢13名(100%)、嘔吐4名(31%)、発熱2名(15%)、腹痛2名(15%)、けいれん1名(8%)と、嘔吐より下痢を呈する率が高く、下痢のみの患者が4名いた。

新潟県内の感染症発生動向調査の定点当たり患者数とウイルスの検出状況をに示した。第1週〜22週にかけて、ノロウイルス等の多種類の胃腸炎起因ウイルスが検出された。アストロウイルスは、新潟市では第7週〜8週にかけて4人から、佐渡市では第16週〜22週にかけて7人から、新発田市では第5週と第21週に採取した検体から検出された。

佐渡市の病院で5月11日〜25日に採取され、陽性となった4検体の患者は、2つの旧市町の別々の保育園の園児であった。患者の保育園は異なっていたが、この時期に保育園での胃腸炎の流行があったことが確認されている。下越、佐渡地域での患者の集積と、佐渡での発生状況から、アストロウイルス感染症の地域的な流行があったことが示唆された。

アストロウイルスの検出はすべてRT-PCR法により、Sakamotoら1)によるPCR法を用いた血清型別ではすべて1型であった。ORF2の3'側可変領域の遺伝子解析では、Dresden株(Ac. No. AY720892)に近縁であり、検索した11株の468bpの相同性はヌクレオチドで98.7〜100%、アミノ酸で98.0〜100%であることから、同型ウイルスによる胃腸炎の流行が推測された。

アストロウイルスによる胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスに比べ検出数は少なく、全国の病原微生物検出情報では、例年30〜50件と、胃腸炎ウイルスの検出数の1〜2%に留まっている。愛媛県の報告では、検出事例が多い年があると報告しており2)、今回の事例と発生時期が一致した。高齢者福祉施設における胃腸炎の集団発生の報告もあることから3)、検索の対象としておく必要がある。

 参考文献
1)Sakamoto T et al ., J Med Virol 61(3): 326-331, 2000
2)山下育孝, 他, IASR 20(8): 192-193, 1999
3)Marshall JA et al ., Eur J Clin Microbiol Infect Dis 26: 67-71, 2007

新潟県保健環境科学研究所ウイルス科
田村 務 広川智香 渡邉香奈子 昆 美也子 西川 眞
佐渡市立両津病院小児科 岩谷 淳
原こども医院 原 錬太郎
新潟県立新発田病院小児科 大石智洋

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